夫婦どちらかが亡くなった際に受け取れる「遺族年金」。皆さんはこの制度を詳しくご存知でしょうか。驚かれることも多いのですが、遺族年金の支給額は「性別」や「働き方」によって大きく異なります。「遺族年金の平均額」などの情報の一部をチラ見し、「自分もこれぐらいもらえるなら、配偶者に万一のことがあっても大丈夫」と思っていると、自分は条件に当てはまらず1円も受け取れなかった…なんていうこともあり得ます。そこで、今回は必ず知っておきたい遺族年金の仕組みについて、CFP®・社労士の井戸美枝氏が解説します。
「遺族年金がゼロって、まさかそんな…」67歳年上妻の急逝を見送った会社員夫、年収193万円ダウンにうなだれるワケ【CFPが助言】
家計の支え手が女性の場合などは、事前にしっかりとした備えを
このように、配偶者が亡くなると、世帯全体の年金額は、おおむね5割〜6割程度に減ることがほとんどです。特に注意したいのは、家計の支え手が女性だった場合です。ケース2の夫Cさんのように遺族厚生年金の対象外となる可能性もあり、収入が大幅にダウンするケースもありえます。
亡くなった人が生活費が不要になるとはいえ、住居費や光熱費などの固定費はそれなりにかかります。大幅な収入ダウンで、家計を大きく見直さなくてはならないこともあるでしょう。よって、家計を支えているのが女性、あるいは共働きの世帯で夫婦の収入が同程度の世帯では、妻が亡くなった際の備えを優先させましょう。
特に住宅をペアローンで購入している場合は要注意。住宅の価格が上がっており、長期間にわたるローンを組む人が増えています。そのため、できるだけ妻の死亡保障を手厚くしておくことをおすすめします。
遺族年金は1940年代に設計され、稼ぎ手が男性だった時代に設計されました。そのため、女性が働き収入を得るようになった現在の社会状況にそぐわないものになりつつあります。社会保障審議会年金部会では、遺族厚生年金の男女差をなくすことなどが提案されています。
執筆/瀧 健
ファイナンシャル・ライター
監修/井戸 美枝
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)