「遺族年金」とは

年金の受給中に亡くなった場合、条件を満たすことで遺族に遺族年金が支給されます。遺族年金には大きく「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、それぞれ支給要件は異なります。

以下でそれぞれの特徴や要件について順にみていきましょう。

遺族基礎年金

遺族基礎年金とは、国民年金に加入中の方や老齢基礎年金を受給中の方などが亡くなった際に、18歳未満の子どもがいる遺族に支給される年金です。

遺族基礎年金の受給額は一律で81万6,000円となり、そこに子どもが1人増えるごとに年金が加算される仕組みです。

【遺族基礎年金の支給額】

・基本額:81万6,000円(2024年度)

・子ども1人目:23万4,800円

・子ども2人目:23万4,800円

・子ども3人目以降:各7万8,300円

遺族厚生年金

遺族厚生年金とは、厚生年金に加入中の人や、老齢厚生年金を受給中の人などが亡くなった際に、遺族に支給される年金です。遺族厚生年金にかんしては配偶者に子どもがいない場合でも支給されます。ただし、子どものいない30歳未満の妻は5年間のみの有期年金になります。

遺族厚生年金の計算式は次のとおりです。

【遺族厚生年金の計算式】

(1)加入月数が300ヵ月未満の場合:平均標準報酬額×5.481/1000×300×3/4

(2)加入月数が300ヵ月以上の場合:平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数×3/4

また、老齢厚生年金を受給中の方が亡くなった場合、次のうちどちらか高い方の金額が支給されます。

・亡くなった方の老齢厚生年金の3/4分の金額

・「亡くなった方の老齢厚生年金額の1/2分の金額」と「配偶者の老齢厚生年金額の1/2分の金額」を合算した金額

その他にも、一定期間厚生年金に加入していた夫が亡くなった当時、遺族基礎年金を受給しておらず、40歳以上65歳未満で生計を維持されていた妻に支給される中高齢寡婦加算などの制度も設けられています。

このように、遺族年金の受給要件は制度ごとで異なります。配偶者が亡くなった際に、自身がどういった遺族年金を受け取れるのかを事前に把握しておくことで、今後発生するリスクに対応しやすくなるでしょう。

年金受給額に不安を感じていなかった前田夫婦

66歳の前田彰さん(仮名)は、同じく66歳の前田佳子さん(仮名)と2人暮らしです。戸建ての持ち家に住んでおり、住宅ローンは完済しています。夫婦には長男と次男の2人の息子がいます。2人とも結婚しており、現在は遠方に暮らしているため、年に数回程度しか会う機会はありません。

夫の彰さんは長年、食品メーカーの商品開発に携わっており、忙しい時期は日をまたいで帰宅することもありました。彰さんの趣味は健康維持の目的で始めたランニングです。定年後の現在も、週末には10kmのランニングを日課にしています。

一方の佳子さんは貿易会社の営業事務として定年まで勤務していました。趣味はヨガで、毎週近くのフィットネスクラブでヨガを楽しんでいます。

夫婦はともに老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給しており、2人合わせて年間360万円(月約30万円)の年金収入があります。

その内訳は以下のとおりです。

夫:老齢基礎年金……80万円、老齢厚生年金……105万円

妻:老齢基礎年金……80万円、老齢厚生年金……95万円

夫婦共働きだったため、年金は月30万円となり、夫婦2人で生活するには十分な金額です。

現在の資産額は預貯金で300万円。彰さんの生涯年収自体はそれほど多いものではありませんでしたが、毎月の年金受給額だけで十分生活ができるので、いまの預貯金でもとくに心配はないと感じています。