夫の定年退職で「夫婦がずっと一緒」の生活がもたらすストレス

智子さん(64歳)は、夫・幸男さん(65歳)の定年退職後の生活に悩んでいます。長年、多忙な会社員だった幸男さんが、突如として家にいる時間が増え、智子さんの生活リズムを乱し始めたからです。

智子さんと幸男さんは大学時代のテニスサークル仲間、結婚したのは智子さんが入社3年目の25歳の時でした。当時としては、ごく当たり前に寿退社をし、その後、出産をして子育てに専念、ひと段落ついてからは、扶養内でパートをしながら今に至ります。

子供たちはすでに独立、家族で暮らしていた戸建ては、正直なところ夫婦2人で住むには持て余しています。結婚当時の「金妻(キンツマ)ブーム」で、老後は庭のテラスでワインを楽しみながらといった暮らしを夢見たものですが、今や庭は雑草との闘いの場と化し、、テラスは老朽化し補修費を考えると頭が痛くなるばかりです。

「DIYでも習って補修してくれればいいのに、毎日家にいても、テレビを見たりスマホをいじったりしてゴロゴロしてばかり。私の行動を細かくチェックするようになって、『今日はどこに行くの?』『何時に帰ってくるの?』と聞いてくるのがうっとうしくて」と智子さんは嘆きます。

現役時代の幸男さんは単身赴任もあり、自宅で過ごす時間はごくわずかでした。その間、智子さんは自由を謳歌し、趣味のフラダンスに精を出し、フラ仲間とハワイに行くなど充実した時を送っていました。そんな智子さんが、絶対譲れないのはフラ活が脅かされることです。

更年期で辛かった時期を乗り越えられたのはフラに出会ったから、智子さんにとってフラは生きがいなのです。発表会が近づくと、レッスンが増えたり衣装代がかかったりと大変なこともありますが、パートを続けているのもフラのためと言っても過言ではありません。

しかし、智子さんの気持ちを逆撫でするように、「今日の夜もいないの?」「夕飯はどうすればいいの?」といちいち幸男さんが聞いてきます。決して悪意は感じないのですが、「これから一生こういう生活が続くのか」「もう耐えられそうにない」と、離婚の二文字が頭をよぎるようになりました。