夫婦どちらかが亡くなった際に受け取れる「遺族年金」。皆さんはこの制度を詳しくご存知でしょうか。驚かれることも多いのですが、遺族年金の支給額は「性別」や「働き方」によって大きく異なります。「遺族年金の平均額」などの情報の一部をチラ見し、「自分もこれぐらいもらえるなら、配偶者に万一のことがあっても大丈夫」と思っていると、自分は条件に当てはまらず1円も受け取れなかった…なんていうこともあり得ます。そこで、今回は必ず知っておきたい遺族年金の仕組みについて、CFP®・社労士の井戸美枝氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「遺族年金がゼロって、まさかそんな…」67歳年上妻の急逝を見送った会社員夫、年収193万円ダウンにうなだれるワケ【CFPが助言】
ケース2:共働き会社員 Cさん、Dさん夫婦の場合
2つめのケースは、夫婦ともに会社員で共働き世帯の夫Cさんと、妻Dさんの世帯です。妻のDさんは病気を患い、短い期間で悪化。67歳で亡くなり、年下の54歳の夫Cさんが遺されました。子どもはいません。
【世帯構成】
・夫Cさん…54歳の年下夫。会社員として勤務中
・妻Dさん…会社を定年退職し、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取り。67歳で死去
・子ども…なし
・夫Cさん…54歳の年下夫。会社員として勤務中
・妻Dさん…会社を定年退職し、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取り。67歳で死去
・子ども…なし
生前、妻Dさんは老齢基礎年金を78万円/年と老齢厚生年金115万円/年、合計で193万円/年を受け取り始めたばかりでした。夫Cさんは年収300万円程度で、65歳に達していないため年金は受給していません。このときの世帯年収は約493万円でした。
先述しましたが、遺族基礎年金の対象者は、18歳未満の子がいる配偶者、または18歳未満の子ども。遺族厚生年金の支給の対象となるのは、妻、子ども、妻が死亡したときの年齢が55歳以上の夫です。
つまり、夫Cさんは、遺族基礎年金・遺族厚生年金を受け取れるいずれの条件も満たしていないということになります。そのため、妻Dさんが亡くなった後は、妻が受け取っていた分の年金額がすべてなくなり、世帯の収入は193万円もダウンすることに。Cさんは自分の収入だけで生きていかなくてはならなくなりました。
夫Cさんは、妻Dさんが亡くなったときに遺族年金がまったく受け取れないとは知りませんでした。それもあり、死亡保険を妻にかけることもしていませんでした。
この夫妻は、「便利な場所がいい」と都会の賃貸住宅に暮らしていたため、妻Dさんが亡くなった後は、遺された夫Cさんが1人で高い家賃を支払わなければならず、それも大きな負担となっています。Cさんは引っ越しを考えているものの、2人で暮らしていた住まいから離れる決断はまだできていないとのことです。