中国古代の史書『漢書』に記載された「酒は百薬の長」という言葉。実際、研究結果としても「まったく飲酒をしない人よりも少量飲んでいるほうが死亡リスクが低い」というデータがあり、「少量飲んだほうが健康」だと信じられてきました。しかし、それを覆す最新の研究結果があると、『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)著者で医師の尾形哲氏はいいます。飲酒と健康の関係について、詳しくみていきましょう。
「酒は百薬の長」は過去の話…2018年の研究で明らかになった、“もっとも長生きできる飲酒量”は?【医師が告白】
肝臓だけじゃない!お酒の飲みすぎがリスクになる病気
お酒は円滑なコミュニケーションをもたらしたり、リラックス効果がある一方、慢性的な飲みすぎは健康への悪影響を及ぼします。
肝臓や胃などの消化器のほか、神経、筋肉、循環器など全身のさまざまな臓器にも障害を引き起こす可能性があります。
アルコールはがんの発症リスクを高める危険因子としても知られています。世界保健機関(WHO)は、アルコールは60種類以上の病気の原因であり、200種以上の病気やけがに関連すると報告しています。
【肝臓のほかに注意したい臓器】
・食道
……咽頭同様に、唾液中の細菌によって生じたアセトアルデヒドが食道の粘膜をがん化させることがあります。特にお酒を飲んで赤くなる人にリスクが高いので、飲みすぎには注意が必要です。
・咽頭
……アルコールが肝臓で分解されるときに生じる毒性の高いアセトアルデヒドは、唾液中の細菌によって生じることも。多量の飲酒で、咽頭にアセトアルデヒドが増えるとがんの原因に。
・乳房
……飲酒をする人のほうが、乳がんの罹患リスクは高くなります。乳がんは女性ホルモンのエストロゲンの刺激が影響しますが、飲酒によってエストロゲンの濃度が上昇すると考えられています。
・大腸
……飲酒量が増えるにつれて、大腸がんのリスクが高まります。国立がん研究センター発表の「がんのリスク・予防要因 評価一覧」でも、飲酒はリスクとして「確実」と評価しています。
尾形 哲
医師
一般社団法人日本NASH研究所 代表理事