眠れない不安の解消や、入眠をよくするためにお酒を飲む「寝酒」。寝酒をする人は特に日本人に多いといわれますが、この寝酒の習慣は、さまざまな「悪循環」を引き起こすと、『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)著者で医師の尾形哲氏は警告します。寝酒と睡眠の関係について、また寝酒の習慣が日本人に多い理由について、詳しくみていきましょう。
日本人に多い「寝酒」の習慣…医師が「いますぐ辞めるべき」というこれだけの理由【専門医が解説】
眠れない不安から寝酒にハマってしまい…
寝付きはよくなっても、寝酒は眠りを浅くさせる!
「寝酒」という言葉が一般化しているように、睡眠とお酒が深く結びついた生活を送る方がいます。しかし、寝酒の習慣に陥ると、睡眠の質が低下してしまいます。
アルコールには鎮静効果があり、就床から入眠までの時間が短くなります。この作用で眠れるように感じるのですが、睡眠後半ではむしろ眠りが浅くなります。お酒の利尿作用でトイレに行きたくなって、目覚めることも。
寝酒が習慣になると耐性がついて、飲酒量が増える原因にもなります。
寝酒が肥満の原因となるのは、睡眠中のアルコール分解が覚醒時より遅いから!?
睡眠中は、アルコールの分解も遅くなります。肝臓では脂肪よりもアルコールの分解を優先するため、体内にアルコールが残っていると脂肪がエネルギーに変わらずに、蓄積されやすくなるからです。
飲酒後に起きているグループと、1時間後から4時間眠ったグループに分け、血中アルコール濃度を調べた研究があります。すると、眠ったグループは、起きていたグループの約2倍のアルコールが体内に残っていたと報告されています(図表2)。
眠れない人と、お酒にハマる人…共通点は「真面目な人」
眠れない人と、お酒にハマる人には、共通点があると思っています。お酒にハマるのはルーズな人と思われがちですが、逆のことも多いです。
真面目ながんばり屋さんほど心身が疲れやすく、疲れているのに眠れず、お酒に頼りやすくなるようです。いい人や優等生タイプの人も、気疲れしやすいといえます。
そのほか、かたくなで完璧主義な人やのめり込みやすい人も要注意。とはいえ、ストレスが多く疲れていると、誰でも陥る可能性があるのです。
寝酒をする日本人が多いのは、災害の多さが関係している!?
寝酒をする人は特に日本人に多いといわれます※。理由は特定できませんが、日本人が多く持つ遺伝子が影響している可能性も。というのも、ポジティブさに関わるセロトニントランスポーター遺伝子のうち、日本人はセロトニンが働きにくい不安遺伝子(SS型)を持つ割合が高いのです。島国で災害が多いお国柄が影響しているかもしれません。
※ Constantin R Soldatos,et al. Sleep Med. 2005;6(1):5-13.
尾形 哲
医師
一般社団法人日本NASH研究所 代表理事