従業員が「配属ガチャでハズレを引いた」と感じると起こること
若い従業員は、希望と異なる部署や職種に配属されたり、相性の合う上司や教育担当者に巡り合えなかったりした場合「配属ガチャでハズレを引いた」と感じます。「ハズレを引いた」と感じた従業員には、モチベーションの低下や早期離職といった影響が発生する可能性があります。
社員のモチベーション低下
希望していた部署に配属されなかった場合、「自分が希望する仕事はいつになればできるのか」「期待されていないのか」と不安や不満から、モチベーションが下がります。
人間関係や職場環境が合わなければ、ストレスをため込み、体調を崩すリスクも高まるでしょう。とくに「この仕事をしたい」という職種に対する高い意欲を持って入社してきた従業員にとっては、配属ガチャでハズレを引くことは、仕事のモチベーションに大きく影響する出来事なのです。
早期離職
従業員が配属ガチャでハズレを引いたと感じると、早期離職につながる可能性もあります。希望する職種に就けなかった場合「ここでは成長できないのではないか」「自分を評価してくれる会社かほかにあるのではないか」と感じ、転職を考えてしまうのです。
株式会社学情の調査によると、社会人経験3年未満の第二新卒が転職しようと思う理由で最多となったのは「もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい」というものでした。転職で実現したいことの質問では「希望する仕事に従事できること」が最多です。
この結果からも、若年層が業務内容にこだわりを持っており、配属ガチャでハズレを引くことは、離職を決断する要因にもなり得ることがわかります。
参考:株式会社学情「20代の仕事観・転職意識に関するアンケート調査(転職理由)2023年8月版」
採用・教育コストの損失
配属ガチャでハズレを引いたと感じた従業員が、仕事に対するモチベーションを失い、離職に至った場合、企業側は以下のような損失を被る可能性が考えられます。
・退職までの給与
・教育にかかった費用
・退職後に人員を補充するためにかかる費用
「就職白書2020」によると、2019年度の新卒採用1人当たりの平均採用コストは93.6万円となっており、従業員を失うことは大きな損失であることがわかります。また、採用や教育に携わった従業員や、周囲の従業員のモチベーションが低下することも考えられます。
「配属ガチャでハズレを引いた」と感じる従業員がいる場合、組織全体の生産性低下にもつながりかねないため、対策を講じる必要があります。
参考:就職みらい研究所「就職白書2020」
「配属ガチャ」による離職を防ぐために、企業ができる対策
新入社員の早期離職を防止するためには、入社前後に新入社員と対話し、理解を得てもらうことが大切です。インターンシップで業務やカルチャーを理解してもらった上で、企業理念や人材育成に対する考え方・方針を伝えることにより、必ずしも希望の部署に配属されるわけではないことを伝えます。
さまざまな部署を経て活躍している先輩のキャリアを例として紹介し、キャリアプランをイメージしてもらうのも良い方法かもしれません。ただし、事前に配属先の希望を確認した上で、できる限り希望を聞き入れる姿勢をみせなければ、自社の方針を理解してもらうことは困難でしょう。
内定出しから入社まで期間が長い場合、もし入社前に配属先が決まっているのであれば、事前に伝えておくことで入社前の不安の軽減につながります。たとえ配属先が決まっていない場合も、配属先の決定予定日や社内の人事状況を伝えるだけで、不安軽減につながるはずです。
希望とは異なる部署に配属が決まった場合は、その理由を丁寧に説明する必要があります。「配属先を決めた社内事情」「期待していること」「会社側が考えているキャリアプラン」を説明することにより、納得感を高められるでしょう。
配属先決定までのプロセスを明確にし、不安や不満を軽減することにより「配属ガチャでハズレを引いた」と受け取られるリスクを回避できるはずです。
配属ガチャの具体的な対策としては、以下の3つのようなものが挙げられます。
・メンター制度
・1on1面談
1つ目の「ジョブ型雇用」とは、業務内容や職務範囲を明確に定義して人材を雇用する雇用形態のことです。入社時から業務内容が決まっているジョブ型雇用であれば、配属先の決定に不安を感じることはないでしょう。ジョブ型雇用は、配属ガチャ問題を根本から解決できる対策になり得るかもしれません。ジョブ型や部門を限定した採用とジェネラリスト枠での採用を併用するのもひとつです。
次の「メンター制度」とは、上司とは別に年齢や社歴が近い先輩社員をサポート役として配置する制度です。他部署の人材を配置することが多く、それにより利害関係にとらわれずに悩みを相談できます。メンターの客観的な意見を聞くことにより、配属先に対する受け取り方が変化する効果が期待できます。
最後に挙げた「1on1面談」とは、文字通り上司と部下が1対1で実施する面談のことです。1対1での対話を通じて「期待していること」「配属先が決まった背景」を明確にすることで、配属先に対する不安を軽減できます。部下の考えていることや悩みを聞き出せば、部下の適性の把握にもつながるでしょう。
現に、KDDI株式会社や株式会社日立製作所、株式会社NTTデータなどは、職種別・コース別採用を実施しており、ほかにもジョブ型雇用を導入する企業が増えつつあります。
ただし、ジョブ型雇用を導入したからといって、配属ガチャ問題がすべて解決するわけではなく、風土や上司との相性がマッチするかどうかはまた別のお話です。上に紹介した1on1面談やメンター制度と組み合わせながら、対策を講じることが大切です。
参考:KDDI株式会社「KDDI版ジョブ型人事制度」
参考:株式会社日立製作所「ジョブ型人財マネジメント」
参考:株式会社NTTデータ「Corporate Profile会社案内 2023」