「配属ガチャ」が発生する背景
近年、配属先に対する不安や不満を「配属ガチャ」と表現するケースをみかけるようになりました。
しかし、企業が配属先を決める方法自体には、大きな変化はありません。
「配属ガチャ」という言葉が生まれた背景には、新入社員をはじめとした若年層の意識変化が影響しているのかもしれません。
そもそも「配属ガチャ」とは?
配属ガチャとは、入社後の配属先に対する不安や不満を、ソーシャルゲームのガチャやカプセルトイの仕組みに例えた言葉です。従業員は、企業が決めた配属先を受け入れるしかありません。自分の努力や能力ではどうにもならない状況に皮肉を込め「ガチャ」と呼ばれています。
配属ガチャは「アタリ」と「ハズレ」で表現します。配属ガチャのアタリ・ハズレの主な対象となるのは、以下の4つです。
・仕事内容
・人間関係
・職場環境
希望していた部署に配属されなかった場合や、希望した仕事内容ではなかった場合に「配属ガチャでハズレを引いた」と言います。人間関係や職場環境もガチャの対象です。
相性が良くない上司や厳しすぎる上司の基に配属された場合、「上司ガチャでハズレを引いた」と表現するケースもあります。職場環境については、勤務地や職場の風通しなどがアタリ・ハズレの対象になります。
以上みてきたように、「ガチャ」という表現はネガティブなニュアンスで使われるケースが多いようです。
「配属ガチャ」発生のメカニズム
企業側は臨機応変な人材配置ができるように、人材を総合的なスキルを持つ「ジェネラリスト」として育てたいものです。ジェネラリストとして育てるためには、ジョブローテーションを通じてさまざまな部署を経験する必要があります。
しかし、新入社員側は「この仕事に携わりたい」という意欲を持って入社を決めています。目指しているのは、ジェネラリストではなく「スペシャリスト」です。そのため、希望する部署に配属されなければ、その会社への愛着や愛社精神がない限り「自分のやりたい仕事ができない」とネガティブな感情を抱くことになり、両者の間にはギャップが生じます。
配属先は、企業内での全体最適を見極めた上で決定されるため、従業員の希望が100%叶うことはあり得ません。その意味では、すべての企業、すべての従業員が「配属ガチャ」のリスクに晒されているということになります。
「配属ガチャ」と受け取られる理由
企業は、従業員の配属先を経営戦略や人員計画、人材の適性を基に総合的に判断しており、ゲームのようにランダムに決めている訳ではありません。
しかし、社会人経験の少ない従業員には、企業の全体最適がわからないため、ランダムに配属先が決まっているように捉えてしまうのです。
内定出しから入社までの期間が長く、自分の配属先に思いを巡らす時間があることも、不安を大きくする要素になり得ます。さらに、配属ガチャという言葉が広く用いられるようになった原因として、以下の2つのように、若年層の意識が変化してきたことが挙げられます。
・個性や意味を重視する傾向
近年では、自己分析をして自分のやりたい仕事を探したり、企業の風土も含めた企業研究をした上で応募先を決めたりする学生も存在します。意識変化が表れているのが、インターンシップの参加率です。
マイナビキャリアリサーチLabの調査によると、2017年卒では55.5%だったインターンシップの参加率は2024年卒では87.6%と、7年間で30%以上も増加しており、企業研究に対する意識が大きく変わっていることが読み取れます。
また、Z世代と呼ばれる近年の若者は、個性や意味を重視する世代です。タイムパフォーマンスも重視しており「無駄な時間を過ごす」「意味のないことをする」ことを避けたい傾向が強まっています。
そのような世代の従業員が、希望していない配属先で働くことを「無駄な時間」「意味を感じられない」と捉えても不思議ではありません。企業の全体最適がわからないことによるランダム感と、個性や意味を重視した考え方による配属先への強い希望が合わさった結果、希望が叶わないと「配属ガチャでハズレを引いた」と受け取られてしまうのです。
参考:マイナビキャリアリサーチLab「2024年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(中間総括)~9月までの振り返り~」