糖尿病を防ぐには、脂肪を落とすことが重要です。脂肪を落とす手段として「運動」が思い浮かびますが、「減量するには運動だけでは難しく、食事から見直すことが大切」と、肝臓外科医の尾形哲氏は言います。尾形氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』(KADOKAWA)より、実際のエピソードとともに見ていきましょう。
「2型糖尿病」が改善する可能性も?…「3ヵ月で10kg減量」を達成する〈5つの極意〉とは【専門医が推奨】
減量作戦を成功に導く「たすきの法則」とは?
「では、広人さんと美希さんによる、3ヵ月10kg減量作戦の実践に向けて、『極意5ヵ条』をお伝えしましょう」
「減量作戦……。何かゲームみたいですね」
「楽しんで取り組むほうが続けやすいし、達成感も得られますからね。さっそくですが、第1条は『毎日体重と食事を記録する』こと。後ほど体重記録表をお渡ししますので、毎日体重を量って記入してください。食事内容も記録して。スマホで写真を撮れば5分もかかりません。次回、記録したものをお持ちください」
「わかりました」
「第2条は『甘い飲み物をやめる』。前回お話ししたとおりです。野菜ジュースは? カロリーゼロ飲料なら飲んでもいい? などと尋ねられることがありますが、私の回答はいつも同じ。飲んでいい飲料は、水、お茶、ブラックコーヒーです」
「スポーツドリンクを見ると、シュガースティックが浮かぶようになりました」
「それはすばらしい。第3条は『野菜を増やす』ことです。1日あたり350gの野菜を食べましょう。両手いっぱいにのる量が目安です。1日5皿の小鉢を目標とするとよいでしょう。生野菜でなくてもかまいません。具だくさんみそ汁をお椀に1杯なら1皿分、ジャーポット(350g)1回分の野菜スープなら2皿分の野菜が摂れますよ。野菜は食事の最初に食べると、血糖値の急上昇を抑えてくれます。特に緑黄色野菜はたっぷりと」
残りの2つは以下だ。第4条は「糖質(精製穀類)を減らす」ことで、第5条は「加工食品を減らす」こと。カップ麺やスナック菓子は、つい口にしてしまうことがある。まずは買わないことから始めよう。そして、先生から2枚の紙を渡された。
「1枚目は先ほどお伝えした体重記録表です。毎日記録して、グラフにしてください。こちらの紙は、広人さんに今、記入してもらってから読み上げてもらいます。次回、1カ月後の目標と最終目標を書き込んでください」
紙には、「私のスマート宣言」と書かれてある。なるほど、そういうことか……。僕は空欄部分を埋めて、読み上げた。
「私のスマート宣言。私は今90kgです。これから4週間、9月12日までに86kgになります! 目標体重80kgまで通院します! 20XX年8月12日 前田広人」
そして、立会人としてO先生も署名欄にサインをしてくれた。「これから3ヵ月、いろいろな不安や葛藤もあるかもしれません。『たすき』が広人さんの体を変えてくれることを信じて取り組んでみてください」
「たすき……?」
「はい。『た』は短期間、『す』は数字にして、『き』は記録するの頭文字です。スマート外来で減量に取り組む方に、『たすきの法則』としてお伝えしています。3ヵ月と期間を限定し、10kg減を実現する。そのために、毎日の体重や食事を記録、見える化するのです。広人さんの体には、すでにたすきがかけられました。美希さんは伴走者です。心強い伴走者もいることですし、しっかり完走して、そのたすきを勲章として掲げられる日を楽しみにしています」
「ありがとうございます。がんばります」
危機感が爆発力を生む。今日からの自分は、昨日までの自分ではない。
尾形 哲
長野県佐久市立国保浅間総合病院
外科部長/「スマート外来」担当医