糖尿病を防ぐには、脂肪を落とすことが重要です。脂肪を落とす手段として「運動」が思い浮かびますが、「減量するには運動だけでは難しく、食事から見直すことが大切」と、肝臓外科医の尾形哲氏は言います。尾形氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』(KADOKAWA)より、実際のエピソードとともに見ていきましょう。
「2型糖尿病」が改善する可能性も?…「3ヵ月で10kg減量」を達成する〈5つの極意〉とは【専門医が推奨】
2型糖尿病患者も「減量」で治る可能性がある?
「今からあることを説明します。その後、改めて同じ質問をしますので、よく聞いていてください。脂肪肝がある人は、体重やBMIが今どれだけあろうと、5%減量すると体調がよくなります。7%以上の減量で、肝細胞の脂肪化や、脂肪肝炎が軽減します。10%の減量で、肝臓が固く変化していく組織の変化、肝線維化も改善することが知られています。
減量の程度によって、どこまでが改善していくかの答えがすでに出ているのです。広人さんは、この数年、脂肪肝による慢性肝炎が続いていたと考えられます。広人さん、何kg減を目標にしましょうか?」
「……9kgですか?」
先生は微笑んだ。
「伝わってよかったです。やみくもに減量を始める前に、動機づけになる明確な目標を立てることが実現への近道です。広人さんは筋肉量も多いので、体重を落としやすいと思います。20歳のときより10kg増えたようなので、最終目標は1kg上乗せして、10kg減にしましょう。広人さん、2型糖尿病の診断がついている人でさえ、減量で治る可能性があるんです。
スコットランドで行われたDiRECT研究によると、内服薬で治療中の2型糖尿病患者さんのうち、1年で体重が15kg以上減った方の86%は、完全に糖尿病の薬をやめることができたそうです」
「わかりました!」
返事をする声に思わず力が入った。隣で妻もゆっくりうなずいた。
「1ヵ月3kg減量のペースで、まずは3カ月9kg減を目指しましょう。その後は体重をゆるやかに減らして80kg以下で6ヵ月キープしてください。広人さんの脂肪肝炎と境界型糖尿病は、どちらも必ずよくなっていきますから」
先生の言葉を、心に刻もう。
「では、どうやって減量していくか話し合いましょう。先ほど広人さんから、運動という発言がありました。でも、運動だけで痩せるのは難しいんです。これはさまざまなデータから明らかです。痩せるには、まず食事から見直しましょう。食事で体重を3~5kg減らしてから運動を始めると、体が軽くなって続けやすいです」
体重が減っていく食事量を知ることが優先! 減量してから運動すれば、体が軽く続けやすい。