定年後、自分がもっとも輝けるキャリアはどの道だろう? 会社に残る、転職する、またはフリーランスになる……どの選択も、その道に必要なスキルがあります。今いる会社で高い評価を得られていなくても、新たなキャリアで輝く可能性も。公認会計士の田中靖浩氏著『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス)より、自分の資質を見きわめ、必要なスキルを磨くヒントをみていきましょう。
サラリーマン時代はまったくダメだった→独立後に実力を発揮…フリーランスに「向いている人」と「そうでない人」の違い
定年後も使える「第3のスキル」とは
巷で話題のリスキリング(学び直し)ですが、令和フリーランスまで考慮すると、次の3つに分けられます。
1.会社内で能力を発揮するためのリスキリング
2.他社へ転職できるためのリスキリング
3.定年後フリーランスとして働くためのリスキリング
社内で実力を発揮できるようにスキルアップするのが「1」です。これはあくまで会社のなかでの実力アップや出世を念頭においています。
次の「2」は「転職できる自分」になることを考えます。いまの会社内で評価されるだけでなく、他の会社に転職できる自分になるためには「他社でも通用するスキル」を身に付けねばなりません。もっと具体的には「転職したら得られる年収」の向上を目指します。これは会計的にいう「時価主義」の発想です。
資産の評価には2つの方法──原価主義と時価主義があります。
原価はその資産を「いくらで買ったか」の購入時の評価額、時価は「売ったらいくらか」の売却を仮定した評価額です。少々の無理を承知でこれを人間の評価に当てはめれば、原価とは「現在の年収」、時価とは「転職したらいくらの年収か」です。サラリーマンには2種類の人がいます。
・原価>時価の人:転職すると給料が上がる
前者の「原価<時価」の人は、今の会社を辞められません。そこで後者の「原価>時価」状態をつくるのが「2」の学びです。そのためにはポータブル・スキルが重要であるといわれます。ポータブルとは持ち運び可能、つまり別の会社に行っても役立つスキルのことです。最近ではプログラミング・スキルなどがこれに当たります。
このように「1」の学びの目標は会社で認められるためのスキル、「2」は別の会社に転職できるスキルです。
先ほどの「早期退職する人」は、その前に「2」のスキルを身に付ける必要があったわけです。「1」と「2」はいずれも「雇われる」ことを前提としたスキルです。
これに対して「3」の定年後フリーランスを目指す学びは、会社を辞めた定年後まで「長期的に持ち運べる」スキルを意識します。会社の定年を迎えても、そのあとフリーランスになって仕事できるスキル。
「1」の社内で出世するスキルと「2」の転職できるスキルのちがいは、汎用性があるかどうか。その会社だけで使える「1」スキルと、転職した会社に持ち運べる「2」スキルはその内容が異なります。
それにも増して「1&2」と「3」のスキルは大きくちがいます。陸上選手でいえば短距離ランナーとマラソンランナーほどちがいます。
だから出世・転職スキルが低く、組織でまったく評価されなかった人が、独立後に突然実力を発揮することがあります。実際、優秀なフリーランスで「サラリーマン時代はまったくダメだった」という人はかなり多いです。
それゆえ「1&2」スキルがダメだからといって諦めないでください。それは「サラリーマンに向いていない」だけかもしれません。「3」のスキルをしっかり磨き、「フリーランスになって時価アップ」を目指しましょう。