「新NISA」を活用するうえで気をつけたいポイント、8つ
2024年1月以降、新NISAの活用を検討中の方へ知っておいていただきたいポイントは、以下の8つです。特に旧NISA利用者は注意ください。
①旧NISAから新NISAへ移管できない
新NISAと旧NISAは別の制度として取り扱われます。したがって、旧NISAで運用している資産をそのまま新NISA口座にロールオーバー(移管)できません。
旧NISA口座で運用している資産を新NISA口座に移したい場合、いったんその商品を売却してから、改めて新NISA口座において購入しなおさなければなりません。
②新NISAでは買えない商品がある
つみたて投資枠で投資できる商品は、旧NISAにおいてつみたてNISAで選べる商品と同じです。金融機関によって多少異なりますが、現状では250本くらいの投資信託がラインアップされています。
一方、成長投資枠では個別株やETFも選べますが、信託期間20年未満、毎月分配型、ハイレバレッジ型の投資信託等は選べません。
③旧NISAと新NISAの口座は別枠で利用可
旧NISAは2023年末までは口座の開設および投資をすることができました。 上述のとおり、新NISAは旧NISAとは別枠で取り扱うので、2023年までに旧NISAを利用していた方は、新NISAの非課税投資枠に加えて、旧NISAの投資枠も利用できることになります。
ただし旧NISAは、投資商品の価額が大きく下落したまま回復できずに非課税保有期間が終了となってしまうケースも考えられるので、リスクを想定しないまま駆け込み購入するのは避けるべきでしょう。
④新NISA口座開設は、1人につき1つの金融機関のみ(旧NISAと同じ)
新NISA口座の開設は、1人につき1金融機関に限られます。これは旧NISAと同様です。したがって、つみたて投資枠と成長投資枠を別々の金融機関で利用することはできません。
⑤新NISA口座の金融機関は変更できる
年単位で(1年ごとに)金融機関の変更が可能です。ただし変更が認められている期間は、NISA口座の変更を希望する前年の10月1日から、変更を希望する年の9月30日までです。
なお、変更前のNISA口座で運用している金融商品は、そのまま保有しておくことができます。利用者それぞれの非課税保有限度額については、国税庁において一括管理されることになります。
⑥投資の許容度・リスク管理が甘くなりがち
新NISAは旧NISAよりも非課税投資枠が大きくなっているため、投資に回すお金を増やそうと考える人も多いでしょう。また、商品の選定についても“流行りもの”や“値がさ株”などに目を向けやすくなるかもしれません。
長い期間では、急に現金が必要になったりすることもありますので、生活に必要な資金(生活防衛資金など)とのバランスを無視して、非課税限度額いっぱいの無理な投資を優先するような安易な姿勢はできるかぎり慎むべきでしょう。
⑦デイトレードには向いていない
新NISAの成長投資枠では短期投資もできなくはないですが、その年に売却した分の投資枠が復活するのは翌年からなので、短期売買を日々繰り返すといったデイトレードには不向きです。
新NISAは非課税保有期間が無期限となるわけですから、長期運用で価格上昇が期待できる商品との相性がよいといえます。たとえば、毎月10万円(年間120万円)を年利5%の1年複利でコツコツとつみたて投資をしたと仮定すれば、20年目には約1,675万円の利益を得ることになります。
これはあくまで理論上の試算であって、必ずしも長期にわたって利回りが安定するとは限りません。しかし、過去のデータ分析により、資産運用の効果は「金額×時間」と相関するということが証明されています。
⑧分配金や配当金の受け取り方次第では課税される
旧NISA・新NISA共通の注意事項ですが、NISA口座で買付けた上場株式の配当金等を非課税とするためには、証券会社で配当金等を受け取る「株式数比例配分方式」に変更する必要があります。ちなみに株式投資信託の分配金については上記の手続は不要です。
なお、「配当金領収証方式(ゆうちょ銀行または郵便局窓口に「配当金領収証」を持ち込んで受け取る方式)」や「登録配当金受領口座方式・個別銘柄指定方式(指定の銀行口座に振り込んでもらう方式)」では非課税にならないので注意してください。
それぞれのライフプランに合わせた投資額で新NISAを始めてみよう
新NISAは投資初心者でも活用できるように整備された制度です。もちろん、非課税投資の幅が広がったことにより投資経験者にとっても使い勝手が良くなります。
初心者も経験者もこの新しい制度を上手に活用するためには、ご自身のライフプランを踏まえて目標や方針を定め、情報収集をし、そしてご自身のペースに合わせて投資することです。
たとえばお勤めの若年層の方々のように、非課税投資枠に比べてまだ運用資産が少ない場合は、毎月1万~5万円など、可能な金額ペースでつみたて投資を行うことが、その時点での最適な投資額であると考えてください。
もちろん、つみたて投資額は柔軟に変更できますし、もし急なお金が必要になったときには部分解約もできますので、新NISAはどのような方にとっても利用しやすい制度です。
西原 憲一
西原会計事務所代表、(株)UFPF代表取締役
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