人生100年時代、まだまだ元気な“60代のおひとりさま”でも「終活」が必要な理由
「人生100年時代」と考えれば、60代の方はまだまだ元気なケースが多いでしょう。さらに“おひとりさま”であれば、財産を渡すべき家族などもおらず、終活の必要性を感じていない方も多いかと思います。
しかし、仮に100歳前後まで生きるとしても、最後まで健康であり続けられる保障はありません。高齢になればなるほど、認知症などにより判断能力が低下してしまうリスクは高くなります。判断能力を失ってしまうと、財産をご自身の意思で処分することはできなくなってしまいます。
また、何らかの事故や病気などによって身体が不自由になれば、徐々に身辺整理を進めていこうと計画していても、それがまったくできなくなってしまうかもしれません。
健康状態が悪化するリスクに備えるためには、早い段階で終活に着手することが望ましいです。
“おひとりさま”であっても、ご自身の築き上げた財産については、ご自身の意思でどのように引き継ぐかを決めたいと考える方が多いです(何もしないと、遺産は国庫に帰属してしまいます)。
たとえば終活の一環として、慈善団体・自治体・学校・文化団体などへの寄付を行うことが考えられます。お世話になった人に財産を譲るのも良いでしょう。有意義に感じる方法で財産を活用することは、自己実現の有力な手段になり得ます。
「人生100年時代」において、60代はまだまだ先が長いと思われる一方で、病気などによって人生が急転するリスクが高まる時期でもあります。早い段階で終活を始めて、いつ何が起こっても良いように備えておきましょう。
“60代のおひとりさま”が10年以内にやるべき「終活」とは?
“60代のおひとりさま”が将来の病気や相続などに備えるためには、終活として以下の対応を検討すると良いでしょう。
①財産の一覧表を作成する
②遺言書を作成する
③余っている財産を生前贈与する
④不用品やSNSアカウントなどを整理する
⑤任意後見契約を締結する
⑥死後の身辺整理をあらかじめお願いする
①財産の一覧表を作成する
終活の中で財産をどのように処分するか検討する際には、まず財産の一覧表を作成するのが第一歩です。
預貯金・有価証券・不動産など、ご自身が所有する財産をリストアップします。その後、生活に必要な財産、もしものためにとっておく財産、手放しても良い財産などに分類して、各財産の使い道を考えていきましょう。
②遺言書を作成する
ご自身の死後に残った遺産は、何もしなければ国庫に帰属してしまいます。
遺産を有意義だと思う用途に使ってほしい場合は、遺言書を作成しておきましょう。慈善団体・自治体・学校・文化団体などへの寄付や、お世話になった人への遺贈など、自由に遺産の分け方を決められます。
遺言書は、民法に従った方式で作成しなければなりません。作成方法について不安がある場合は、弁護士などの専門家にサポートを依頼することをおすすめします。
また“おひとりさま”の場合は、遺言書の存在を誰かに知らせ、その内容を実現してもらえるように手配しておくことも重要です。
たとえば、信頼できる専門家を遺言執行者に指定した上で、ご自身が亡くなった際にはその専門家に知らせてもらえるように、友人の方などに頼んでおくことが考えられます。
③余っている財産を生前贈与する
ご自身が生きている間には使いきれないと思われる財産は、生前贈与することも有意義な選択肢です。
例えばお世話になった人に生前贈与をすれば、生きている間に感謝を受けられますし、早い段階で財産を有効に活用してもらえます。慈善団体・自治体・学校・文化団体などへの寄付についても、生前贈与として行えば、その財産が有効活用される様子を見届けることができるでしょう。
④不用品やSNSアカウントなどを整理する
身の回りの物やSNSアカウントなどは、不要になったと判断した段階で整理しておきましょう。ご自身が亡くなった後の身辺整理が簡潔になり、「立つ鳥跡を濁さず」を実現できます。
⑤任意後見契約を締結する
70代、80代と年齢が進むと、認知症などによって判断能力が低下するリスクが高くなります。将来の認知症などに備えるためには、「任意後見契約」を締結することが考えられます。
任意後見契約とは、判断能力が低下した際に、財産に関する行為を代理してもらう人(=任意後見受任者)をあらかじめ指定する契約です。ご自身の判断能力が不十分となった際に、家庭裁判所に申立てを行うことで、任意後見受任者は「任意後見人」に選任されます。
任意後見人は、任意後見契約で定められた法律行為(契約の締結など)を、本人の代わりに行うことができます。信頼できる人を任意後見受任者に指定しておけば、万が一認知症などに罹ってしまった際にも安心です。
⑥死後の身辺整理をあらかじめお願いする
“おひとりさま”の場合、亡くなった後の身辺整理をしてくれる人がおらず、自宅が荒廃してしまったり、近隣住民に迷惑をかけたりするケースがよくあります。
このような事態を避けるため、信頼できる人に死後の身辺整理をあらかじめ依頼しておくことが望ましいです。やってほしい身辺整理の内容をまとめた上で、それを記載した「死後事務委任契約」を締結すると良いでしょう。
“60代のおひとりさま”の「終活」でやってはいけないこと
“60代のおひとりさま”が終活をする際には、特に以下の2つのことをしないようにご注意ください。
①生活資金のシミュレーションを十分に行わない
②専門家ではない人に財産の管理を任せる
①生活資金のシミュレーションを十分に行わない
財産を生前贈与する場合は、ご自身が生きている間の生活資金について、十分なシミュレーションを行うべきです。
想定以上に長生きした結果、生活資金が足りなくなって「あの時生前贈与をしなければよかった…」などと考えるようでは本末転倒です。十分長生きすることを想定した上で、必要な生活資金を確保しながら終活を行いましょう。
②専門家ではない人に財産の管理を任せる
家族がいない“おひとりさま”が、専門家ではない他人に財産の管理を任せるのは危険です。実際にご自身の判断能力が低下したときや、ご自身が亡くなったときに、財産を横領されるおそれがあります。
これに対して、弁護士などの専門家は法律や職業倫理によって規制されています。ごく一部に横領等の悪質な行為をする専門家も存在しますが、大多数は財産の管理を任せる上で適任といえるでしょう。
任意後見受任者や遺言執行者などを選ぶ際には、弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
まとめ
終活は、ご自身の死後に備えるとともに、残りの人生を有意義に過ごすことにも役立ちます。“60代のおひとりさま”も、ご自身が行うべき終活の内容を少しずつ考え始めてはいかがでしょうか。
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所 代表弁護士
1990年11月1日生。東京大学法学部卒業・同法科大学院修了。弁護士登録後、西村あさひ法律事務所入所。不動産ファイナンス(流動化・REITなど)・証券化取引・金融規制等のファイナンス関連業務を専門的に取り扱う。民法改正・個人情報保護法関連・その他一般企業法務への対応多数。
同事務所退職後は、外資系金融機関法務部にて、プライベートバンキング・キャピタルマーケット・ファンド・デリバティブ取引などについてリーガル面からのサポートを担当。弁護士業務と並行して、法律に関する解説記事を各種メディアに寄稿中。埼玉弁護士会所属 弁護士。著書:『債権法実務相談』(西村あさひ法律事務所編)(共著)
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