何かと耳にする「年収の壁」。しかし「あれっ、103万円の壁と聞いたけど」「いや、わたしは106万円の壁って聞いた」など、「年収の壁」と呼ばれているものが色々とあり、混乱気味。いまいちど、「壁」を整理してみましょう。
年収の壁とは?「100万円の壁」「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」「150万円の壁」「201万円の壁」…6つまとめて解説

社会保険上の「年収の壁」…2つ

次に社会保険上の壁についてみていきましょう。

 

年収の壁⑤ 106万円の壁

106万円は、社会保険料がかかるかどうかの境界線です。従業員101人以上の企業で週20時間以上働いて年収106万円(厳密には月収8.8万円)を超えると、社会保険に加入する必要があります。会社の規模によって扶養から外れるため、「106万円の壁」といわれています。

 

年収の壁⑥ 130万円の壁

130万円は、家族の扶養に入るか、それとも外れるかの境界線です。年収が130万円以上になると、社会保険の被保険者の扶養から抜けて、自ら社会保険に加入しなければならなくなり、自身の給与から健康保険や厚生年金などの社会保険料を支払う必要が生じます。会社の規模に関わらず、すべての人が社会保険に加入することになるので「130万円の壁」といわれています。

 

年金世代なら知っておきたい「211万円の壁」

現役世代が気にしたい、6つの年収の壁。ほかに年収の壁として知られているのが「211万円の壁」です。この場合の年収は年金のこと。年金収入のみで生活している65歳以上の夫婦2人の世帯が、「住民税非課税世帯」になるかどうかの境界線です。

 

壁の条件は「世帯主の年金収入が211万円以下であること」「配偶者の年金収入が155万円以下」の2つ。これらの条件がクリアされていれば、住民税がかからない、というわけです。

 

ただし、住民税非課税限度額には、居住地の「級地」により3パターンあり、211万円は大都市圏を中心とする「1級地」の基準。ほかに「193万円の壁」「203万円の壁」の地域も。居住地を変えることで、それまでかからなかった住民税がかかるようになる、逆にかからないようになるということも、珍しくはありません。

 

政府も「年収の壁対策」に本腰

年収の壁を意識して「働くのを控える」ことが、さまざまな弊害を生み、問題視されています。そこで政府は「年収の壁・支援強化パッケージ(キャリアアップ助成金関係)」をスタート。年収の壁を超えることで人件費が膨らむ企業に対する支援で、企業をサポートしてその分を従業員に還元してもらおう、という取り組みです。

 

そもそも、壁を超えずに働くことがプラスになるか、壁を意識しないで働くことがプラスになるかは、家庭の事情によるところも大きいでしょう。綿密なシミュレーションのもと、働き方を考えることが大切です。

 

[参考資料]

エン・ジャパン株式会社/「エンバイト」『1000人に聞いた「年収の壁」に関する調査レポート』

厚生労働省『年収の壁・支援強化パッケージ(キャリアアップ助成金関係)』