会社員として50代に突入すると、自分のキャリアの天井がみえてきます。そんななか、会社が退職金の割増しを条件に「早期退職」を募集したら……思わず手を挙げてしまうという人も少なくないでしょう。ただ、人によっては割増し額以上に損することも。『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス)の著者で公認会計士の田中靖浩氏が「早期退職してはいけない人」の特徴を解説します。
割増しの退職金に、思わず「辞めます!」…定年前の早期退職“絶対にNGな人”の特徴【公認会計士が警告】
多様性を尊重する日本の“ゾッとする未来”
現在の社会はこの種のアドバイスを最も嫌います。結婚するかしないか、何歳で出産するのか、それらはすべて「人それぞれ」。そんな多様性を尊重する空気のなかで「結婚や出産」に触れることはタブーです。セクハラだと言われかねません。
しかし「人それぞれ」に生じたツケは必ず本人の晩年、金銭の苦労として返ってきます。これから晩婚化と高齢出産が進むとすれば、「足し算」の結果として起こることは何なのか。
「人生のマネープラン」については長期的に考えねばなりません。我々の親世代はそれを教えてくれませんでした。しかし私たちはそれを次世代に伝えるべきだと思います。なぜなら高齢化によって次世代のマネープランはもっと厳しくなっているはずですから。
これからの時代、夫婦の間では少なくとも「子どもの学費」と「住宅ローン」をめぐる「足し算」については話をしておくべきでしょう。わが子が大学卒業の年、そしてローン完済の年に自分は何歳になっているのか。その年齢近辺になったとき、会社における自分の雇用、そして給料の状態はどうなっていると予想されるか。
まだ子どもが小さい場合には、これから公立・私立のどちらに進学させる予定なのかも考えておかねばなりません。その進路によって学費の額が大きく異なります。ここで「甘すぎる見積もり」をしてしまうと、後で必ず痛い目を見ます。
役職定年によって予想外の収入減に見舞われそうな場合には、学費やローン支払いは大丈夫かを早めに確認しましょう。時間があれば対応できる選択肢が多いし、早めの対応によって「家族でピンチに立ち向かう」体質をつくることもできます。
いまも日本人には「お金の話をするのは苦手」という夫婦・家族が多いですが、収入減などの不安が高まっている昨今、それではすまされません。自分と家族を守るために家族内のコミュニケーションを良好にしましょう。
昨今の会社では上司や部下との「コミュニケーションの重要性」が再認識されていますが、それにも増して重要なのは家族内のコミュニケーションです。金銭的な問題については一人で抱え込まず、夫婦・家族というチームでピンチに対応できるよう心がけましょう。
田中 靖浩
作家/公認会計士