会社員として50代に突入すると、自分のキャリアの天井がみえてきます。そんななか、会社が退職金の割増しを条件に「早期退職」を募集したら……思わず手を挙げてしまうという人も少なくないでしょう。ただ、人によっては割増し額以上に損することも。『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス)の著者で公認会計士の田中靖浩氏が「早期退職してはいけない人」の特徴を解説します。
割増しの退職金に、思わず「辞めます!」…定年前の早期退職“絶対にNGな人”の特徴【公認会計士が警告】
家庭内でお金の話を“タブー”にしない
人にはそれぞれの金銭事情があります。家族のあるなし、持ち家か賃貸か、貯金はいくらあるか、借金はどれだけあるか、などなど。
それぞれの状況に応じたマネープランを考えるわけですが、その金銭問題への対応を「貯金あるいは株式投資」をメインにしてきたのがこれまでの特徴です。
それは「大人期の蓄えを老人期へ回す」発想です。これに対して、「老人期もフリーランスとして働きましょう」というのが筆者の主張です。
老人期にも働くことができれば、貯金はその分少なくてすみます。
「老後の生活:貯金+退職金年金+フリーランス収入」
と考えれば、それほどの収入を稼ぐ必要はなく、月に数万円で十分という人が多いでしょう。
“晩婚化のツケ”は高齢になって表れる
定年後も働くとして、いつまで働くかは本人と家族の事情によって決まります。子どもの教育費や住宅ローンの返済が残っている場合、働かざるを得ません。それがいつまでかは、子どもが生まれたときの年齢、そして住宅ローンを組んだときの年齢によって決まります。
たとえば私には3人の子がいますが、最後の息子が生まれたのは私が40歳のときです。ということは息子が大学に行って卒業する22歳のとき私は62歳。
40+22=62……正直に白状しますと40歳の私はこの足し算をしていませんでした。「息子の大学の学費を払い終えるのは62歳」だと理解していなかったのです。
子どもができて家族が増えると住まいが手狭になり、新居への引っ越しや購入を考えます。現在、日本人の初婚平均年齢は「30歳」。結婚して数年後に子どもができ、その数年後に住宅購入するなら「30代後半」のタイミングが多いでしょうか。
たとえば38歳で25年ローンを組んだら返済終了は63歳です。38+25=63……この足し算をわかってローンを組んだ人がどれだけいるでしょう? ほとんどの人は「63歳で働かねばならない自分」のことを想像していなかったはず。そして63歳をめぐる雇用の状態がどれだけ厳しくなっているかについても。
晩婚化のツケは高齢になって表れます。ちなみにこれを避けるためには「早めに結婚して、早めに子どもをつくる」ことしか解決策がありません。自分は手遅れだから、せめて後輩やわが子に伝えましょうか。「早めに結婚して、早めに子どもをつくれ」と。