いまだに根強い「老人ホーム」へのネガティブイメージ
そもそも老人ホームは、困窮する高齢者を対象とする養老院がルーツとされ、それが国の制度上に位置付けられたのは昭和の初期のこと。さらに戦後、旧生活保護法により保護施設として位置づけられ、1963年には老人福祉法によって、老人ホームと呼ばれるようになりました。
元々、困窮者の救済や生活保護の位置づけだったこと、また昔は「年老いた親は子どもが面倒をみるもの」という考えが一般的だったので、「親を老人ホームに入れること」は相当ネガティブなものでした。まさに昭和時代は「老人ホーム=姥捨て山」というイメージが根付いていたわけです。
それから平成、そして令和と時代は移り変わり、「老人ホーム」への印象は大きく変わりました。それでも昭和時代の印象が根強く残っています。
株式会社 LIFULL senior/「LIFULL 介護」による『介護施設入居に関する実態調査 2023年度』によると、ホーム入居前に介護施設に抱いていたイメージとして、「社会的な孤立感や悲観的な雰囲気がある」と回答した人が12.4%いたほか、「高齢者への尊厳と個別のニーズへの配慮が不十分」が10.0%、「スタッフの対応やサービスに問題がある」が9.3%、「ケアやサービスの品質が低い」9.0%など、老人ホームに対してネガティブな印象を抱いている人は一定数いることが分かります。
老人ホームのネガティブなイメージ。しかしそんな印象は家族の入居後に大きく変わるようです。「社会的な孤立感や悲観的な雰囲気がある」というイメージは12.4%→5.0%、「高齢者への尊厳と個別のニーズへの配慮が不十分」は10.0%→5.4%、「スタッフの対応やサービスに問題がある」は9.3%→5.3%など、いずれも数値を減らしてます。
女性の後日談。叔父と叔母を連れて母に面会しに行ったときのこと。比較的新しいホームだったこともあり、ふたりとも「なんか良いところじゃない」と目を輝かせていたといいます。
――老人ホームって、カーテンに仕切られた部屋に詰め込まれているというイメージだったから
伯母と伯父からは軽く謝罪があったといいます。
口だけの親戚の声に惑わされず、最良の選択を
女性のように親を老人ホームにあずけるにあたり、親族から反対されるケースは多くみられます。特に身近で介護の様子を間近で見ていない親戚ほど、口だけ挟んでくる傾向があるとか。
しかし、大切なのは介護される本人と介護する家族。口だけの親族の声に左右されないようにしましょう。
厚生労働省『雇用動向調査』によると、介護離職に至る人は年間9万〜10万人ほど。しかし、その多くが老後を見据えた資産形成のラストスパートというタイミングで離職となり、将来的に老後資金が不足する事態に陥るケースが頻発。社会問題となっています。専門家も資産形成が不完全な状態での介護離職は避けるべきと警鐘を鳴らしています。親の介護の負担。ケアマネジャーなどに相談をしながら、適切なタイミングでホームへの入所を検討することがポイントです。
[参考資料]
厚生労働省『高齢者向け住まいの今後の方向性と 紹介事業者の役割』