古くなってきた自宅の寿命を延ばすべく、リフォームを検討する人も少なくありません。リフォームで失敗しないためには、「工事の依頼先をしっかり考えることが大切」と、一級建築士・高橋みちる氏はいいます。高橋氏の著書『やらなければいけない一戸建てリフォーム』より、リフォームにおける施工業者選びについて詳しく解説します。
「全力でご希望、叶えます!」…戸建て自宅のリフォームを熱意あふれる業者に発注した結果、招いてしまった〈あまりに不幸な結末〉【一級建築士が解説】
リフォームの施工業者、どう選ぶ?
何の工事をしたいかがおおよそ固まったら、次は「誰に工事をしてもらうか?」を考えなければなりません。これ、皆さん本当に悩ましいところだと思います。依頼先を選ぶという初期選択を間違えると、結果として「失敗リフォーム」につながる可能性が高まってしまいます。
例えばマンション専門のリフォーム会社に一戸建てのリフォームをお願いしたら、どうなると思いますか? 「うちはマンションがメインですから」と断られることは滅多にありません。担当者がやってきて、全力であなたの希望を叶えてくれようとします。あなたはその熱意に感動し、信頼を寄せることでしょう。
しかし、熱意や一生懸命さだけでは乗り越えられないのが、知識と経験です。マンションは構造体であるコンクリートの壁以外であれば、内部の間仕切り壁は自由に変更することができます。しかし、木造の一戸建ては、内部の壁一つ一つも構造体として家全体を支えているため、壁や柱の位置を変更するにはそれなりの計算や補強を検討しなければなりません。
けれども、マンションしか扱わないその担当者は、マンションと同じように自由に壁の位置を変更し、あなたを魅了するようなプランを全力で作ってくれるかもしれません。その結果、必要な壁を撤去してしまい、家の耐力に問題を抱えることになってしまったら、あまりにも不幸な結末……では済まされない話です。
残念なことですが、このようなことは少なからず現実に起こっています。
新築ならば確認申請と言って、計画に違法性がないかどうかを着工前に第三者機関が確認するシステムがあります。しかし、リフォームでは増築などがともなわない一般的な工事の場合、その計画の妥当性を第三者が確認するシステムがありません。もちろんリフォームによって違法状態にされてしまったなら、後から施工業者と裁判などで争うことも可能ですが、そこには大変な労力がかかってしまいます。
自分がその当事者にならないために必要なことは、第一に「依頼先を間違えない」ことです。もっと具体的に言えば、「頼もうとしている工事が得意な業者に依頼する」ことです。というのも、リフォーム業者というのは世の中に数多く存在しますが、皆それぞれに得意・不得意分野というのがあるからです。
先にお話しした事例は、マンションリフォームが得意分野の業者に一戸建てという不得意分野のリフォームを頼んでしまったのが失敗の原因でした。では、得意・不得意分野を見極め、間違いのない依頼先探しをするにはどうしたらいいのか、見ていきましょう。