断熱性能を上げることで、健康にもよい影響がある?

住み心地や光熱費に関係する、断熱性能をみていきましょう。省エネ法の改正により、これからの住宅には高い断熱性能が求められるようになります。では、そもそも断熱性能とはなんでしょう?

「雨風をしのぐ」といえば家と名乗るために必要な最低限の機能ですが、そこに「暑さ寒さをしのぐ」という機能を加えるために必要なのが断熱性能です。

具体的には、天井(または屋根)・壁・床の外気に接する部分に断熱材を入れ、窓には断熱サッシや二重サッシなどを使います。布団をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

寝室がどんなに寒くても、性能の良い羽毛布団で隙間なく体を包み込めば、自分の体温でホッカホカに温まりますよね。家も同じで、できるだけ性能の良い断熱材を家の外側に隙間なく充填することで、外気の暑さや寒さをブロックし、少しの冷暖房で家中を快適な温度に保つことができるようになります。

では断熱性能を高めると、どんなメリットがあるのでしょうか。第一には冷暖房にかかる光熱費が少なく済みます。近年は電気代も上昇の一途をたどっており、今後もまだまだ上がり続けると言われていますので、毎月支払う光熱費が少しでも抑えられるのはありがたいことですね。

しかしメリットはそれだけではありません。断熱性能を上げ、冬場に家全体を暖かな空間にすることは、健康にも良いというのです。どういうことなのでしょうか?

気温が下がると「血圧が上がる」事実

断熱性能と健康との関わりを考える際に、まず知っておいていただきたいのが気温と血圧の関係です。

[図表1]は10℃の温度低下によってどの程度血圧が上昇するのかを、年代別に調査したグラフです。年齢によらず気温が下がれば血圧は上がっていますが、特に注目すべきは、年齢が上がるにつれその影響がどんどん大きくなっていることです。

70歳を超えると、10℃の温度低下で10以上も血圧が上がっています。統計的にも暑い夏より寒い冬に亡くなる方が多いと言われていますが、高齢になるほど、寒いということ自体で体に大きな負担がかかってしまうのです。

この血圧が高い状態が続くのはもちろん良くないのですが、血圧が大きく変動するというのも体には大きな負担となります。家の話に戻りますが、家の中に温度差があり、血圧に急激な変動を生じさせてしまうことをヒートショックといいます。

最近はメディアからもよく聞く言葉となりましたが、暖かいリビングから寒いお風呂に入るときや、温かいお布団から寒いトイレに行くときなどに大きな温度差がある場合、血圧に急激な変動を生じ、最悪の場合死亡事故にもつながるという話です。

ヒートショックの原因となる家の中の温度差は、家全体の断熱性能が低いために起こります。断熱リフォームで断熱性能を上げ、家全体の室温低下を防ぐことで、ヒートショックも改善することができます。

出所:国土交通省2017年報道資料
[図表1]温度と血圧の関係出所:『やらなければいけない一戸建てリフォーム』(自由国民社)より抜粋、データ引用元:国土交通省2017年報道資料