昨年75歳以上の人口が2,000万人を超えるなど、超高齢社会を突き進む日本。国民のほとんどが介護する側・される側のどちらかになる“1億総介護時代”になる日もそう遠くありません。こうしたなか、なくてはならない職業が「介護福祉士」です。しかし、その給与額が実情に見合っていないと、医師の秋谷進氏は警鐘を鳴らします。今回は、介護福祉士の給与が上がらない理由とその背景についてみていきましょう。
国民の10人に1人が80歳以上…需要増える「介護福祉士」の“思わず目を疑う”給与額【医師が警鐘】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ベースアップ+能力のある職員はさらに上乗せ…国がすすめる「加算」制度

政府はこうした現状を改善すべく、介護職員の基本給を上げるためのさまざまな取り組みを行っています。

 

その1つが「介護職員等ベースアップ等支援加算」です。これは、令和4年10月の介護報酬改定(臨時改定)をきっかけに創設されたしくみで、介護職員に対して3%程度(月額 9,000 円相当)給与を引き上げるためにつくられました。また、介護職員以外の職種にも配分することが可能な加算であり、柔軟性が強い加算として注目を集めています。

 

加えて、「介護職員処遇改善加算」といって、処遇改善を目的として月額1.5万円〜3.7万円が国から介護事業所へ支給される制度があるほか、「特定処遇改善加算」という、経験や能力のある介護職員に対してさらに上乗せされる制度もあります。

 

このように、国はさまざまな加算制度を通して、介護福祉士の給料を上げようという試みを行っています。一方、こうした加算を取得しない(=制度導入に取り組んでいない)施設が10%程度あるようです。

 

その理由としては、「賃金改善のしくみを設けるための事務作業が煩雑」「計画書や実績報告書の作成が煩雑」「賃金改善の仕組みの定め方が不明」といったものが挙げられます。

 

しかし、職員の処遇改善は施設の安定的な運営において必須です。こうした制度の力を借りながら、給与のベースアップと人員の安定的な確保に動くことが急務でしょう。

 

まとめ…介護業界の“あたりまえ”を変えるために

高齢化が進むなか、ますます重要度が増す介護福祉士。一朝一夕では叶いませんが、「介護福祉士の給与=高いのが当たり前」となるように、私たちは高齢者と介護業界をともに支えられるだけの「新しいシステム」を作る必要があるといえます。

 

いま、日本は介護において1つの「転換期」を迎えているのではないでしょうか。

 

 

秋谷 進

医師