資産を有効活用したい…「年金繰下げ受給」を決断したA夫婦

――ああ、年金は繰り下げちゃダメだった……。

70歳のAさんは、自身が妻と10年前に立てた計画を見返して思わず悔し涙がこみ上げてきます。

Aさんは10年前、それまで勤めていた地方の大手企業を60歳で定年退職しました。Aさんには、同い年の妻Bさんとひとり娘のCさんがいます。Cさんは大学を卒業後、実家を離れて都内の企業に就職したため、現在はBさんと2人暮らしです。

当時、Aさんの貯蓄は1,500万円の退職金と親から遺産相続した現金をあわせて4,000万円近くありました。

※ 定年退職金の平均額は、大卒で大企業の事務・技術(総合職)の場合2,858万4,000円、同じく大卒で中小企業の場合1,149万5,000円となっている(出典:中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査(資本金5億円以上労働者1,000人以上)」/東京都「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」)。

「子育ても終わったことだし、この退職金と貯蓄をうまく使って、悠々自適なセカンドライフを送ろう」

そう考えたA夫妻が真っ先に浮かんだのは資産運用でした。しかし、夫婦ともにこれまで投資の経験はありません。

そこで悩んだ末、リスクをとって運用はせずに「年金繰下げ受給」で年金を増やすことにしました。

夫婦が立てた“完璧な計画”

夫婦が立てた年金受給計画は下記のとおりです。

〈A夫婦の「年金受給計画」〉

・年金の受け取り開始時期を5年繰り下げる(受給開始年齢を70歳とする)。

・65歳から受け取ると夫婦で月21万円ほどだが、5年繰り下げた場合の受給額は約30万円(42%増額)となる。

・60歳~70歳までの10年間は貯蓄を取り崩して生活する。

この計画で行けば、60歳からの生活費を月26万円と決めて70歳まで継続しても、貯蓄は880万円ほど残ります。

「70歳から増えた年金が受給できれば、その分家計に余裕ができる。もし介護やリフォームなどでまとまった出費が必要になっても大丈夫だろう」

2人は「完璧な計画ができた」と満足気です。