「高年齢求職者給付金」は、最大50日分しか支給されない

65歳で定年退職したAさんは、Bさんのように失業保険は支給されませんが、次の3つの条件を満たせば、高年齢求職者給付金が給付されます。

・65歳以上

・失業している

・退職日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して合計6ヵ月以上

賃金日額は、先ほどと同様「退職前6ヵ月間の賃金の合計(賞与は含まない)÷180」で求められますので、年収約550万円のAさんの場合は約275万円÷180=約1万5,277円となります。

基本手当日額は、前掲[図表2]をみると賃金日額が1万3,890円を超えているため、Aさんの基本手当日額は上限額の6,945円です。

出所:厚労省労働省の資料を参考に筆者が作成
[図表3]基本手当日額の計算方法(令和5年8月1日以降) 出所:厚労省労働省の資料を参考に筆者が作成

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高年齢求職者給付金は失業保険とは違い、雇用保険の被保険者の期間が1年以上なら50日分、1年未満なら30日分が一括給付されます。

したがって、Aさんは50日分となり、6,945円×50日分=34万7,250円が一括給付されます。

Bさんが受給する失業保険は76万1,250円、Aさんが高年齢求職者給付金を受給する場合34万7,250円。「Bのほうが退職前の年収は低かったのに、失業保険はBのほうが2倍以上高いんですね……」Aさんは肩を落としてしまいました。

机上の計算ではありますが、もし、AさんがBさんと同様に64歳11ヵ月で退職すれば、失業保険が104万1,750円支給されました。

ただし、失業保険はすぐに受け取れるわけではない

ただし、失業保険(基本手当)や高年齢求職者給付金は、ともにハローワークに離職票を提出して求職の申し込みをした日から7日間の待機期間があり、この期間を過ぎるまでは支給を受けることができません。さらに、失業保険の場合は2ヵ月間の「給付制限」(支給が受けられない期間)が設けられているため、注意が必要です。

失業保険の場合は、4週に1度の認定日ごとにハローワークで失業確認を受け、その都度支給されます。高年齢求職者給付金の場合は、失業認定を受けると一括で給付されます。

なお、失業保険、高年齢求職者給付金ともに、「受給期限」は離職日の翌日から1年間です。失業の認定をもらうまでに時間を要することもあり、なるべく早めに手続きを済ませることが大切です。