いま、世間を騒がせている自民党の「裏金問題」。「パーティー券」をきっかけに勃発した献金がらみの話題はメディアでも盛んに取り上げられていますが、実は医療業界でもそうした「黒いうわさ」があると、医師の秋谷進氏はいいます。今回は、製薬会社と医療機関における“黒いウワサ”について、秋谷氏が解説します。
製薬会社が医師会理事長に「3,000万円超」を支払い…表沙汰になっていない「医療業界」の“裏金問題”【医師が告発】 (※写真はイメージです/PIXTA)

調査した医師353人のうち“ほぼ全員”が製薬会社から数千万円受け取っている

しかし、このように国をあげてガイドラインが制定されているにもかかわらず、いまも医師と製薬会社のあいだでは多額の金銭授受が行われているのが現状です。

 

2023年に発表された「2016年から2019年までの日本の耳鼻咽喉科医と製薬会社との財務関係の評価」についての論文によると、「8,190人の耳鼻咽喉科医のうち3,667人(44.8%)は、2016年から2019年のあいだに製薬会社72社から講演、コンサルティング、執筆の対価として総額1,387万3,562ドルを支払われている」とあります。

 

約半数の医師がコンサルティングなどの名目でお金をもらっているということになりますね。さらに、1,387万3,562ドルというと、日本円に換算すると約20億1,167万円ものお金が動いていることになります。

※ 1ドル=145円で計算。

 

また、同じ論文のなかで「臨床診療ガイドラインを執筆している耳鼻咽喉科医のほうが、そうでない医師に比べてもらっている金額が著しく高かった」と述べられており、直接販売に影響を与える医師がターゲットになりやすいことがわかっています。

 

理事会会長は3,000万円以上…「公正な医療」が崩壊している現実

耳鼻科だけではありません。内科学会の理事と製薬会社に関する論文もあります。

 

これも2023年に発表された「2016年から2020年までの日本の内科学分科会理事と製薬会社とのあいだの金銭的利益相反」に関する論文ですが、15の医師会に所属する理事会メンバー353人のうち、350人(99.2%)が 5年間に製薬会社から1回以上の個人支払いを受けていることがわかっています。99.2%ということは、ほとんど「全員」ですよね。

 

受け取っていた金額の中央値は5年間で150,849ドル。日本円に換算すると約2,187万円にのぼります。特に、理事会の会長や副会長だった人は中央値225,685ドル(約3,272万円)というから驚きです。

 

製薬会社から1人3,000万円以上もらって「公正に薬剤を判断できる」という自信はありますか? すぐに首を縦に振れる人は少ないのではないでしょうか。

 

製薬会社と医療業界の癒着是正が求められる

繰り返しますが、均質な医療が患者全員に等しく行われるためには、こうした「医療機関と製薬会社との金銭的授受」は絶対にあってはなりません。

 

もしこの世の中に「抜きんでて優れている薬」があったとしても、それは医師との金銭授受によって世に広まるのではなく、公正な臨床試験によって判明すべきです。

 

製薬業界と医療業界の癒着を是正するためには、第三者による厳正な態度が求められます。

 

 

秋谷 進

医師