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「人口減少の日本でこれからの賃貸経営は不利」は本当か?
減少の一途を辿っている、日本の人口。2020年(令和2年)の国勢調査によると、2015年から94万9,000人減少しました。94万人とわれてもピンとこない方もいるかもしれません。香川県や秋田県の人口がそれぞれ約95万人ですから、一つの県に相当する人口が減ってしまったということです。
確かにこれだけ急減すると、賃貸経営者は今後空室リスクに怯えることになるのではないか、とつい考えてしまうのは自然なことでしょう。しかし、この国勢調査では単純な人口減とは違う側面も見えてきます。
人口が約95万人も減少している一方で、「世帯の総数」は237万世帯増加しているのです。特に1人世帯は273万世帯増加しています。2人世帯では78万世帯の増加です。しかし3人以上の世帯は軒並み減少しています(プラスマイナスで237万世帯の増加となります)。
世帯数が減少している都道府県は、秋田県、山口県、高知県、長崎県の四県のみ。その他はすべて増加。世帯数が最も増加しているのが東京都では約53万世帯増加しています。
ちなみに東京都は人口もちょうど53万人増加しています。これは何を意味するのでしょうか。東京には進学で学生の単身世帯が流入しているのではないかとつい考えてしまうかもしれません。しかし15歳~25歳以下の年齢層では世帯数にほどんと変化がありません。
増えたのは65歳以上のリタイア世代です。65歳以上の単身世帯が約38万世帯増えていて、全体の48.2%を占めているのです。特に75歳以上の単身世帯に急激な増加が見られます。つまり、世帯数の増加の一因は高齢者の単身化だということです。
さらにその理由を考えていくと、ふたつ考えられます。
ひとつは「生涯未婚率の増加」です。生涯未婚率とは一生未婚でいた人の率ではなく、50歳時の未婚率を算出した率です(50歳時点で未婚であれば生涯結婚しないであろうという推計)。この生涯未婚率が1985年あたりから急増しはじめ、2020年では男性全体の28.3%を占めるようになっています。15歳以上の未婚の率は男性の方が高く、今後も増加することが考えられます。ネットなどでよくわれる、通称「ソロ社会化」が進行しているということになります。
もうひとつの理由は「戦後のライフスタイルの変化」です。戦前の農村のように2~3世帯が同居する家族構成は、戦後に急速に減っていきました。代わって増えたのが核家族。高度成長期に核家族を構成していた家族が、進学や結婚で独立し、配偶者が死亡して単身となったというケースです。
団塊世代についで人口が多い「団塊ジュニア世代」が今後高齢化するにしたがい、単身高齢世帯はより増加するでしょう。特に平均寿命の長い女性の単身世帯が増えるものと思われます。
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国勢調査の結果から考える「今後の賃貸経営に活かせるヒント」
これらのことから考えていくと、次のようなキーワードが浮かんできます。
・世帯数の増加
・高齢単身世帯の増加
・生涯未婚率の増加
・東京都(首都圏)への人口・世帯の集中
これを賃貸経営に活かすことができるかもしれません。もちろん他の統計データと合わせて検討する必要があります。
単身者が増えるなら…ペット飼育可物件は有望?
「単身世帯が増えているからペットを飼育する人が増える」→「ペット飼育可能な物件が求められる」と考える賃貸物件オーナーも多いと思います。ペット飼育可は現在ではニーズの高い条件かもしれませんが、将来的には見直した方がいい考え方かもしれません。
一般社団法人ペットフード協会の「2022年全国犬猫飼育実態調査結果」によると、犬の飼育頭数は2013年から減少傾向、猫は横ばいです。今後の「飼育意向(飼育を続けたいと思うか)」は全世帯で低下し、将来的にはペットの飼育をやめる人が増えると考えられます。
これにはペットの飼育は関連費用が高額になりやすいこと、旅行の時などに預かってくれる人がいないことなどが阻害要因として挙げられます。高齢単身世帯では入院による長期不在もありえるため、ペットの飼育には大きなハードルとなるでしょう。また一部のペットショップでは高齢者への新規の販売を避ける(あるいは保証人を求める)傾向があることも今後に影響するでしょう。
立地戦略にいかすには?
高齢化というポイントを理解することが賃貸戦略の立案には重要です。
男性の生涯未婚率増加、団塊ジュニアの高齢化というポイントからは、金銭的にゆとりのある男性の中高年世代(50歳以上~)の姿が見えてきます。単身であるということは持ち家を避け賃貸を選択すると考えられます。単身の中高年であれば、病院、スーパーマーケット、駅が近いなど交通の便がいいこと、徒歩圏内で生活が完結することを一層求めるようになるでしょう。
また世帯数が増えているとはいえ、人口が減っている地方都市ではいずれ世帯数も減少していきます。物件は首都圏に所有することが将来的な収益性、経営上の安全性に繋がっていきます。
さらにゆとりのある高齢単身者の場合、一定の年齢から有料老人ホームなどを検討しはじめるケースも多くなります。しかし入居時に多くの資金が必要になるほか、入居期間がどれほどになるか分からず、資金に相当の余裕がないといけません。そのため、なるべく長く自宅で暮らしたいと願う方も多くなるはずです。賃貸物件においては、立地のみならず、建物も緊急時に備えて低層でエレベーターが備わっているなどの快適性、安全性が求められます。
孤独死などを恐れ高齢者の入居を避けてきた不動産オーナーは多いのではないでしょうか。しかしこの高齢者という「リスク要素」をどう攻略し、戦略に組み込むかが、賃貸経営の将来を左右していくといっても過言ではありません。
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