思い出の地へ赴き、自分の手で家族を送る「海洋散骨」…供養にもっと自由な選択肢を

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株式会社ハウスボートクラブ
思い出の地へ赴き、自分の手で家族を送る「海洋散骨」…供養にもっと自由な選択肢を

THE GOLD ONLINEで連載を始めてから30回目となりました。これまで海洋散骨のサービスやお客様の声、墓じまいサポート、オーダーメイドのお別れ会、シニア層向けのオーダーメイド旅行などをご紹介してきました。今回は、株式会社ハウスボートクラブの4つの事業の経緯や想いについて、代表取締役社長の赤羽真聡が語ります。

手を合わせる場所は、お墓やお仏壇の前だけではない

本連載をはじめたきっかけは海洋散骨のサービスを知っていただくことでした。昔ながらのお墓だけでなく、樹木葬や納骨堂、永代供養など、多様な選択肢がある昨今において、海洋散骨も同様に多くの人に求められるサービスになっていくと考えています。当社は東京湾から始まり、現在82ヵ所のエリアで海洋散骨ができるようになりました。

 

手を合わせる場所は必ずしもお墓やお仏壇の前ではなくてもいい。もっと自由な選択肢があっていいと思っています。その想いを実現するために当社のサービスがあります。現在は海洋散骨・墓じまい・お別れ会・旅の4本柱でサービスを展開しています。

海洋散骨の需要は増えているが…

海洋散骨の会社は年々増えており、需要の高さを実感しています。海洋散骨をしたいというお声はよく聞きますが、世間的にはご遺族が船に乗らずに、業者に委託して散骨される割合が多いようです。

 

一方、当社では7割弱がご遺族の手で海洋散骨をしています。なぜなら当社はセレモニーを大事にしているからです。お骨をパウダー状にする様子を見ていただき、ご自身で袋詰めまで行い、乗船して散骨をしていただきます。粉骨の様子を見たくない方は別の部屋にいることもできます。

 

なかには涙される方もいますが、意外と明るい雰囲気で家族の会話が生まれる瞬間でもあります。「これが肩の骨で……」とお話すると、「昔、野球をやっていたから立派な肩だったよね」など、自然とエピソードがでてきたりします。他社にはなかなか真似できないことではないでしょうか。

 

当社は海洋散骨を専門に17年間続けてきたノウハウがあり、セレモニーを大事にしてきたからこそ、このような空間をつくることができます。価格競争により安価な海洋散骨のサービスは増えていますが、安ければいいというものではないのです。些細なやり取りひとつ一つが供養に繋がると信じています。

墓じまいの課題も解決

2023年5月には墓じまいのサービスを展開しました。お墓参りやお墓の維持に悩みを抱える方は年々増加傾向にあります。墓じまい後の供養先として海洋散骨したいと当社にご相談くださるお客様も増え、ニーズが高まっていることを強く感じています。

 

費用やお寺とのやり取りなどを含め、課題の多い墓じまいのサポートをすることで、お客様の多様な選択肢の一助となるのではないかと考えます。

葬儀とは別に、「お別れ会」を開催したい方が増えている?

当社は以前よりオーダーメイドのお別れ会を提供してきましたが、ここ数年は個人の問い合わせが増えています。もともと、著名人のイメージが強かったお別れ会ですが、コロナ禍以降大きな変化を感じています。

 

コロナ禍の葬儀の縮小により、本来希望していた送り方ができなかったという方が多くいました。その影響もあり、落ち着いてから個人でお別れ会を開催したいと考える傾向がみられました。したがって、2023年度に当社でお手伝いしたお別れ会は過去最高の施行件数となりました。どなたもこだわりがあり、故人らしさや想いを強く感じられるお別れ会となりました。

 

病院で余命宣告をされたというご本人様からお別れ会を開催したいと相談を受けた事例もありました。葬儀は自分が亡くなってから遺族が考えて決めることが多いのに対し、生前に行う「感謝の会」は自分の理想のカタチを実現することができます。近年は終活の影響もあり、そういった生前準備をされる方が増えてきている印象があります。今後さらに増えていくと感じています。

 

『海洋散骨×旅行』のビジネス展開

家族旅行は子どもも大人も楽しめて、思い出づくりができる特別な機会です。年齢を重ねるごとに思い出を作りたい、楽しい旅行をしたいと考える機会は多くなります。そこで、旅行ついでに大切な家族を想うことができたら、楽しい日常で自然と供養ができるのではないかと考えました。

 

たとえば、沖縄で海洋散骨をして家族旅行を楽しむことができたら、今後は沖縄旅行が家族の恒例行事になり、法要の意味をもたせることもできます。従来のお墓参りにはなかった新たな可能性を生み出すことができるのではないでしょうか。これが当社の世界観であり、いまの時代だからこそできる新しい供養へのチャレンジです。


海洋散骨に伴う宿泊手配から移動手段まで、すべてを網羅できればお客様の負担が軽減するのではないか。という思いから、昨年より「えんの旅」という旅行サービスを展開してきました。

 

ハワイでの散骨旅行は特に印象的な旅となりました。生前に行くことが叶わなかったから、ハワイに海洋散骨することで供養をしてあげたいと願うご家族の想いが込められていました。「また1年後にハワイに来ようね」というご家族の会話はとても美しかったです。『海洋散骨×旅行』は前向きな気持ちになります。
 

それぞれのお客様のストーリーを大切にする

大切な瞬間に、お客様がどれだけ気持ちを入れられるかどうかは私たちの腕にかかっているといっても過言ではないでしょう。だからこそ、お客様のすべての瞬間を大切にしています。

 

粉骨の時間の会話や海洋散骨の空間づくり、旅行の計画、お別れ会の演出など、すべてが一度しかない大切な時間になります。大切な方をどのように送り出してあげられるかを一緒に考えた結果、4つの事業へと展開していきました。

女性が活躍できる会社に

人の心に寄り添うサービスを提供しているため、女性の強みを活かしやすい職場だと思います。相談に来るお客様も女性が多いこともあり、女性のほうが話しやすいと感じるお客様が多い傾向にあります。

 

これからは、お客様が希望のコーディネーターを指名できる制度を導入することも考えています。

残される家族のために「死」について考える

自分が死ぬなんて……考えていない、考えたくない、という方がほとんだと思います。しかし、死について考えることは決してマイナスなことではありません。終活があるように、自分の死について考えることは、残される家族のことを考えることでもあり、明るい未来を描くことにも繋がります。

 

いままでは家族で考えてきたことが、これからは個人が考える時代に変化しつつあります。さまざまな選択性がある時代だからこそ、事前に考え、準備することで可能性は大いに広がります。

 

葬儀も供養も多様化しているからこそ、この連載を通じて、ルールに縛られず、型に捉われず、自分らしい最期のかたちを見つけてもらえたらと思います。

 

 

赤羽 真聡

株式会社ハウスボートクラブ 代表取締役社長