安定のイメージが強い公務員。特に国家公務員であれば、その安定ぶりはピカイチです。定年を迎えた後も不安も何もないんだろうな……多くはそう思いますが、意外にも生活が苦しいと訴える人が多いようです。みていきましょう。
退職金「2,000万円」超え…「国家公務員」生涯安泰も、5人に1人が「定年後に生活苦」の実情

安定した収入、多額の退職金…それでも生活苦に陥る「国家公務員」

いま定年退職を迎えようとしている国家公務員は、初めての東京五輪が開催されたころ、日本が高度成長期のころに生まれた人たち。若手の頃にバブル景気を経験し、働き盛りの30代~40代の頃には、日本はどん底に。そして50代を迎えるころには、国家公務員のブラックぶりが広く知られるように……もちろん職種などによって異なりますが、このような変遷を辿ってきた人たちです。

 

長年、日本のために頑張ってきた定年を迎える国家公務員。そこで手にする退職金はどれほどになるのでしょうか。内閣官房『令和4年度 退職手当の支給状況』によると、常勤職員のうち、定年退職したのは1万4,283人で、平均退職金は2,112.2万円。またそのうち、行政職俸給表(一)適用者は4,086人で、平均退職金は2,111.4万円でした。

 

日本経済団体連合会の発表では、勤続38年の平均定年退職金は2,243.3万円なので、大企業を長年勤めたサラリーマンよりは若干下回る水準。それでも、定年退職金額が右肩下がりの現状、2,000万円を超える退職金は羨ましい限りです。

 

ただ、そんな額の定年退職金を手にした国家公務員も、その後、誰もが安泰とはいかないようです。

 

人事院『令和2年度 退職公務員生活状況調査』によると、60歳定年退職をした国家公務員のうち、「引き続き働いている人」は89.6%。そのうち81.0%が再任職員。そのほか国の機関や地方公共団体等も含めると、9割が公務員の延長。1割が民間企業で働いています。

 

自身の平均収入は、月「21万~30万円」が最も多く31.5%。次いで「11万~20万円」が16.8%、「10万円以下」が7.3%。また世帯年収の平均は37.7万円で、平均支出額は37.6万円でした。

 

また現在の家計の状況について、17.8%が「ゆとりがある」と回答する一方で、「苦労している」が22.6%、「生活が苦しい」が17.9%でした。

 

民間企業と比べて派手さはないかもしれませんが、安定した収入を手にし続け、最終的に2,000万円を超える退職金を手にした国家公務員。それでも20%強がやりくりに苦労し、20%弱が生活苦を訴えています。

 

そこから学ぶべきは、資産形成の重要性。定年を迎えた国家公務員に「定年退職後の生活・生活設計について考えるようになった時期」を尋ねたところ、50代前半が25.9%、50代後半が50.0%でした。半数が定年直前になってから定年後を考える……これでは一生安泰という立場でも、定年後に生活苦に陥るのも当然かもしれません。やはり、資産形成は長期的な視点で取り組むことが大切です。

 

[関連資料]

人事院『公務員白書』(令和4年度)

内閣官房『令和4年度 退職手当の支給状況』

人事院『令和2年度 退職公務員生活状況調査』