年末年始、実家に帰省。せっかくの機会ですから「もし親が亡くなったら」ということも親子で話し合い、準備を進めていきたいものです。何も準備をしていないと、思わぬ事態に巻き込まれるケースも。みていきましょう。
年金10万円〈80代の母〉が逝去…50代の息子、10年ぶりに訪れた「実家の市営団地」で直面する「衝撃的な有り様」 (※写真はイメージです/PIXTA)

親の生前整理…デリケートな話をどう切り出すか

1人暮らしの高齢の親。頻繁に帰ることはできず、帰省するのは年に1度か、2度か……そのようなパターンも多いでしょう。久々に親と会ったときには楽しい話だけをしたいものです。しかし、しておいたほうがいいのが「もしもの時に備えて準備をしておこう」といった話。しかし親子とはいえデリケートな話題のため、なかなか切り出せないなど、遅々として進まないというのが多数派のようです。

 

株式会社林商会が60代以上の親がいる子世代に行った『親の生前整理に関する調査』によると、8割が「自分の親に生前整理をしてほしい」と思いつつも、「生前整理をするか分からない」「生前整理はしない」が半数を占めています。一方で「親の生前整理をした」「する予定」の人の4割は「親が切り出した」と回答。3割が「親と子がどちらともなく切り出した」、同程度で「子から切り出した」と回答しています。

 

話を切り出すこともなく、その時を迎えたという50代の男性。「1人暮らしの母が住んでいた市営団地は凄まじい状況だった」と、80代になる母親がガンで亡くなったあとのエピソードを綴っています。

 

――月の年金は10万円くらいで、生活は楽ではなかったと思う

――だから、なんでも「もったいない」と溜め込むようになった

――もともと、片付けのできない人だったけど、年を取ってさらにひどくなった

 

会うたびに「家を片付けろ」とうるさくいったからか、男性は実家を“出禁”に。帰省しても近くのホテルに泊まってといわれ、実家以外の場所で母と会うようになったといいます。そして母が亡くなったのを機に、10年ぶりに実家の市営団地へ片付けに。そこはまさに“ごみ屋敷”と呼ぶに相応しい光景だったといいます。

 

――モノで溢れて足の踏み場もない。大雪のなかをかき分けて進んでいく……あの感覚に似ていた

 

あまりの惨状に知人の業者に片づけを頼み、費用は総額40万円。さらに畳と襖は腐っていたので、原状回復費用としてプラス20万円。当然というべきか、母親には遺産と呼べるようなものはなく、合計60万円は男性の自腹でした。

 

――自分でやろうにも賃貸だったので時間がなく

――60万円の出費は正直痛い。母が亡くなっても、泣くに泣けない

 

前出の調査では、

 

古くからの友人がなくなった際の話などを親子でしていた時に自分たちももう若くないと親が気づき始めたのでそれをきっかけに生前整理の話となり穏やかな雰囲気で進めることができました。

 

出所:株式会社林商会『親の生前整理に関する調査』より

 

と、周囲の体験談により「生前整理をしなければ」と考えるようになるケースは多いよう。この年末年始、第三者のエピソードの力を借りて「もしもの時の話」を切り出してみてはいかがでしょうか。

 

[参考資料]

セコム株式会社『離れて暮らす親に関する意識調査』

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』

株式会社林商会『親の生前整理に関する調査』