雑誌やWebメディアの株式投資特集ではよく「注目銘柄」が紹介されていますが、そうした銘柄に飛びつくのは賢明な投資行動とはいえません。いうまでもなく、大きな利益を得られるのはメディアよりも先に「自分なりの注目銘柄」を発見した投資家です。本稿では株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、「注目銘柄」の捉え方について解説します。
もはや“手遅れ”のケースも多いが…メディアが報じる「注目銘柄」を買ってもいいタイミングとは?【株式投資のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「注目銘柄」を買うかどうかは株価次第

メディアで紹介される「注目銘柄」を買っても、当然ながら必ず利益を得られる訳ではありません。株式に限らず、それがどんなに良い物であっても割高な価格で買ってしまえば、それ以上の価格で売ることは難しくなります。損をしないためには、株式でも何でも、適正以下の価格で買う必要があるのです。

 

利益を出したいならば、まだ割安だと判断できるタイミングでその「注目銘柄」を買う必要があります。メディアで紹介され、株価が上がり、割高になったタイミングではもはや手遅れというケースが多いでしょう。情報が発信された直後、株価が割安といえるタイミングであればいいですが、もし割高な水準にある場合はまた下がるのを待つか、あきらめてほかの銘柄の購入を考える方が賢明かもしれません。

 

そのほか、「いま注目の『割安』銘柄」という情報を目にしても、やはり株価の妥当性を考える必要があります。その銘柄が安いのにはそれ相応の理由があり、もともと「割安」なのではなく、「安くて当然」の銘柄なのかもしれません。また、情報の発信から時間が経過し、もう割安でなくなっていることもあります。

 

そうした可能性も考慮し、本当に株価が割安かどうかを考えてみましょう。

それが本当に注目すべき価値のある銘柄かどうかはわからない

そもそも、その銘柄が「本当に注目に値するか」を考えるべきです。

 

注目銘柄を紹介する記事を書いている人に「モノを見る眼」があるかどうかも定かではありませんし、未来というのは不確実なものです。つまり、その話が当てになるか否かを、慎重に考えるべきなのです。

 

メディアというのは、定期的にコンテンツを発信して読者を楽しませる、というのが主な仕事です。「いま注目すべき銘柄はありませんし、いつそれが現れるかもわかりません。該当銘柄が現れたときだけ、このサイトを更新します」では、読者を集められないでしょう。定期的にコンテンツを発信していくからこそ、メディアは成り立つのです。

 

そして多くのメディアは広告を有力な収入源としていますので、定期的にコンテンツを発信して読者=広告に目を通す人を増やすことが目的となっています。そちらのほうが、株の予測が当たるか否かより重要だという一面もあるのです。

 

そしてメディアは、集客のために、株式市場における流行を作り出そうとしたり、それに乗ったりすることがあります。過去を振り返ってみても、ITやクラウド、再生可能エネルギー、脱炭素、AI、EV、米国成長株、日本割安株、新NISA……と、さまざまなキーワードが流行し、それに基づいた注目銘柄が紹介されています。

 

しかしその「注目銘柄」が、すべて成長し続けている訳ではありません。メディアで大々的に紹介された銘柄を買っても、本当に利益が出るかどうかはわからないのです。