インフレや歴史的な円安により、日本に住む私たちはどんどん貧しくなっています。数年前までは悠々自適な老後が描けていた高収入世帯でも、いまや老後破産は他人事ではありません。退職時に2,000万円の退職金を受け取ったにもかかわらず、2年で退職金が底をついてしまった佐藤さん(62歳・仮名)もその1人。佐藤さんになにがあったのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの松田梓氏が解説します。
退職金2,000万円が2年で消えた!?…62歳・大手企業の元サラリーマン「悠々自適な老後」が一転、破産の危機に陥ったワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「世の中のせい」だけではない…佐藤さんの退職金が“2年で消えた”ワケ

厚生労働省の調査によると、いわゆる大企業の退職金平均額は大卒の場合約2,230万円(高卒で約2,018万円)となっています。佐藤さんの退職金は大企業の平均退職金と同程度支給されており、悠々自適な老後を迎えられるはずです。
※ 厚生労働省「令和3年賃金事情等総合調査」より

 

コロナや円安など想定外の出来事はあったものの、佐藤さんが2年で退職金が消えてしまった原因は他にもあります。

 

1.退職金での住宅ローン返済

まず、「退職前に住宅ローンを完済していなかったこと」が挙げられます。

 

住宅ローンは「繰り上げ返済」をすることで、早期返済できるだけでなく住宅ローンの総返済額を圧縮できるメリットがあります。

 

ただし、お子様の独立までは住宅ローンの「団体信用生命保険」を万が一の保障として残しておき、あえて繰り上げ返済しないというのも選択肢のひとつです。その場合は、退職金とは別に貯蓄をしておくといいでしょう。

 

2.資産運用をしていなかった

それから、佐藤さんは資産運用をほとんどしていなかったことも影響があったと考えられます。留学費用やリフォーム費用などがかさむなかで、資産のほとんどを日本円で保有していたことにより、知らぬ間に資産が目減りしてしまいました。

 

3.どんぶり勘定な家計管理

家計の“見える化”をしてこなかったことも要因のひとつです。

 

「今、資産がどれくらいありますか?」と聞かれて、パッと答えられる自信のある人はどれだけいらっしゃるでしょうか? 年収の高い世帯には、「毎月いくら収入があって、どれだけ支出があるのか把握していない」という「どんぶり勘定」な家計管理をしているケースがよく見られます。

 

では、具体的にどのような対策をとることができるのでしょうか。