インフレや歴史的な円安により、日本に住む私たちはどんどん貧しくなっています。数年前までは悠々自適な老後が描けていた高収入世帯でも、いまや老後破産は他人事ではありません。退職時に2,000万円の退職金を受け取ったにもかかわらず、2年で退職金が底をついてしまった佐藤さん(62歳・仮名)もその1人。佐藤さんになにがあったのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの松田梓氏が解説します。
退職金2,000万円が2年で消えた!?…62歳・大手企業の元サラリーマン「悠々自適な老後」が一転、破産の危機に陥ったワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

まだ間に合う?…老後破産を回避する“4つの対策”

1.家計管理や資産の“見える化”

まずは家計簿をつけて、家計管理をすることから始めてみてはいかがでしょうか?

 

紙の家計簿をつけるのが面倒と感じる人には、家計簿アプリがおすすめです。1度銀行口座やクレジットカードなどを連携させてしまえば自動で記録されるため、手間がかかりません。

 

また、月末に「資産の棚卸」をするのもおすすめです。現状、どれくらいの資産があるのか、先月より資産は増えたのか減ったのか、ザックリでも構いませんので把握することが大切です。

 

2.固定費の見直し

固定費の見直しとして代表的なのが「保険」です。子どもが独立すれば、大きな死亡保障は必要なくなります。

 

また、現在は時代の流れに合った保険がたくさん登場しているため、古いものはそうした新しい保険に乗り換え、不要な保険は思い切って解約することで毎月の支出を減らせる可能性が高いです。

 

3.年金の「繰下げ受給」の検討

将来的に、本来65歳で受給予定の年金を遅らせて受け取る「繰下げ受給」をすることで、老後の年金を増やす方法があります。繰下げ受給をすると、65歳から受け取る場合に比べて1ヵ月ごとに0.7%増額され、増額された年金は一生変わりません。

 

たとえば、70歳まで繰下げた場合の年金増加率は42%(0.7%×60月)です。なお、2022年4月から年金の繰下げ受給の受給開始年齢の上限は70歳から75歳に引き上げられたため、最長75歳まで繰り下げることが可能になりました。75歳での増加率は84%(0.7%×120月)です。 

 

4.元気のあるうちは働くことも視野に

医療の発達などさまざまな原因により、昔に比べ、現代の60代は心身ともに若くて元気です。もし健康で元気なら、65歳以降も働くことを視野に入れてみてもいいかもしれません。

 

老後破産の危機は「これからできること」に集中すれば回避可能

最後に。今回の事例では、退職金が底をついてしまったとはいえ、終の棲家である自宅のローンを完済し、リフォームにより自宅が生まれ変わりました。また、子どもは留学の夢を叶えられて、みんなが幸せになれるお金の使い方だったと思います。

 

お金は、使ってはじめて価値が生まれます。家族が幸せになれるいいお金の使い方だったと思い、これからできることに集中すれば、老後破産を回避することは十分可能です。未来に目を向けて、豊かな老後の準備をしていきましょう。

 

 

松田 梓

株式会社FP STYLE

代表取締役/ファイナンシャルプランナー