就職後、多くの人は40年近くサラリーマンとして頑張り、そして定年を迎えます。「老後はふたりで……」と定年後の生活に思いを馳せる夫婦も多いでしょう。しかし、パートナーがひそかに離婚を考えているケースもあるようです。本記事では、Tさんの事例とともに、熟年離婚のお金のリスクについてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。
「あなた、今までありがとう。」年収2,000万円の55歳エリートサラリーマン…結婚26年、全然気が付かなかった“50歳妻の大きな変化”に絶句【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫が同僚とW不倫

Tさんは、首都圏に在住、不動産会社の役員(50歳)です。貯蓄は3,000万円、お子さんが生まれた年に5,000万円のマンションを購入しました。住宅ローンはTさんが勤める企業の定年退職のタイミングと同じ60歳完済で、あと1,700万円ほどです。

 

Tさんは、大学卒業後入社してしばらくたったころに、同じ部署に配属になった妻K(45歳)さんと29歳のときに社内恋愛の末に結婚しました。Tさんは、身長185cm、小・中学生のころはサッカー、高校生になってからはバスケット部に所属していました。快活な性格で仕事もできるTさんは、女性社員から憧れの存在だったそうです。

 

Tさん夫婦には3人の子供がいます。私立大学に通う長男(20歳)、中高一貫校に通う次男(17歳)、別の中高一貫校に通う長女(14歳)です。のびのび育てたいというTさんとは違い、妻Kさんは子ども達の教育にとても熱心でした。妻Kさんの意向や子ども達の希望もあり、3人とも中学受験をさせることになりました。

 

子ども達が小学生になると、受験のための塾通いで忙しくなってきます。Tさんは、10年ほど前から、休日に出勤したり一人で出かけることなどが多くなり、家族そろって外出することはほとんどなくなっていました。

 

妻Kさんは、Tさんの様子を近くで見ながら、「忙しいのね。体調を崩さなければいいけど……」と心配をしていましたが、このころは、「もしかしたら……」と浮気を疑う気持ちもありました。銀行から引き落とされるお金の額が大きくなっていることも、疑う気持ちを抱く原因のひとつになっていました。

 

Tさんの勤務する会社には、妻Kさんの同僚がいまも在籍しています。

 

妻Kさんは、12年前に会社を退職して、現在は専業主婦ですが、年に1~2回勤めていた不動産会社の友人と、昼食を食べながら、お互いの近況を話す機会がありました。

 

ある日、食事会の楽しい時間が終わり、帰ろうとしていたときでした。「あのね……」社内での夫の行動や噂話を、友人がそっと教えてくれたのでした。噂というのは、「Tさんが社内の女性とW不倫しているのではないか」というものでした。

 

「離婚を考えています」

妻Kさんは、思いつめた顔で筆者に相談に来ました。

 

「夫に好きな女性がいるみたいなんです……。私は離婚を考えています……」

 

妻Kさんは、家庭内でのTさんの行動や友人から聞いた話、子どもの教育方針についての意見が夫婦で異なったときのTさんの様子などを静かに話してくれました。子ども達の学校のことなどで相談しようとしても、最近は興味を持ってくれないそうです。

 

「そうですか……。いろいろとお辛い状況だったのですね。ご主人には離婚についてお話になったのですか?」

 

「いえ、まだ……」

 

「では、離婚する際に決めておかなければならないことなどを確認しておきましょう」