がんや脳卒中など、身近な人が大きな病気にかかった際、家族には「治療費」という重い負担がのしかかります。特に、子どもの教育費がかかる時期であれば、その負担感はなおさら大きくなるでしょう。しかし、治療費のことばかりに気を取られていると、その後の思わぬ請求に頭を抱える可能性も……。本記事では、後藤夫婦の事例とともに、家族の死後に必要となる費用や注意すべきポイントについて、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。相談者の名前はすべて仮名です。
「治験」で、治療費の心配はなかったんですが…51歳夫をがんで亡くした51歳妻の想定外。夫の死後、矢継ぎ早に届いた「500万円の請求書」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

働き盛りの夫にがんが発覚、経済的な不安を和らげた「治験」

大企業の部長を務めていた後藤崇さん(仮名)は、同い年の妻・純子さん(仮名)と協力しながら、千葉の戸建てで3人の子どもたち(長女27歳、長男26歳、次男23歳)を育て、忙しくも充実した日々を送っていました。

 

そんな崇さんにがんが見つかったのは、5年前のこと。まだ子どもの学費がかかる時期でした。標準治療では十分な効果が期待できないとわかり、絶望の淵に立たされた崇さんと純子さん。そんなとき主治医から提案されたのが「治験」への参加です。

 

がん治療において、治験は「新しい治療を試せる機会」であると同時に、経済的な面でも家族の支えになることがあります。治験では、治験薬そのものの費用や関連する検査費用の一部を製薬企業が負担するケースが少なくないためです。

 

夫婦は相談のうえ、治験への参加を決断。これにより、闘病中は治療費への不安をあまり抱かずに過ごすことができました。純子さんにとって、仕事を続けながらの通院や崇さんの体調に合わせた生活の調整など心身の負担は決して軽くはなかったものの、「お金の心配だけは最小限で済んだ」ということが、当時の大きな支えになっていたそうです。

 

もちろん、治験には効果や副作用の面で不確実性が伴うため、経済的な負担の軽さだけを理由に選択すべきものではありません。あくまで主治医との相談のもとで検討すべき選択肢の一つですが、経済的な安心感が闘病生活を支える要素になり得ることは、知っておいてよい事実だと思います。

葬儀・お墓・仏壇で500万円…見落としていた「亡くなったあと」の費用

一方で、純子さんが想定していなかったのが、崇さんが亡くなったあとにかかる費用です。

 

長い闘病の末、崇さんは51歳で逝去。人望の厚かった崇さんのため、葬儀は入社以来の付き合いがある同期や同僚、親族にも参列してもらえるよう、一般葬を選びました。また、崇さんの実家は京都市内にあり、両親も健在です。遠方であることから、お墓と仏壇は別で購入することに。

 

純子さんや子どもたちが暮らすエリアから近い霊園と契約し、仏壇は将来的に実家の位牌をまとめることも見据えて大きさに配慮して選んだ結果、葬儀・お墓・仏壇の費用は合計500万円にのぼりました。

 

「こんなにかかるのね……想像できていなかった」

 

闘病中は治療費の心配を抑えられていた分、亡くなったあとの費用の重さが一気にのしかかり、純子さんはため息をつきました。