(※写真はイメージです/PIXTA)
「45歳のデッドライン」という呪縛
首都圏在住の前田健一郎さん(仮名/45歳・会社員)はいま、猛烈な焦燥感のなかにいます。
妻(40歳・パート)と、高校生の長男(16歳)、中学生の長女(13歳)の4人家族。手狭になった家賃13万円の賃貸マンションを出て、「そろそろ自分たちの城を」と、先日家族で住宅展示場へ足を運びました。
そこで営業担当者にいわれたのが、「45歳のデッドライン」という言葉です。
「前田さん、35年ローンを組むならいまがリミットですよ。45歳で組めば完済は80歳。これ以上遅れると、借入期間を短くせざるを得ません。月々の返済額が跳ね上がりますから、いまがまさに『デッドライン』なんです」
うすうすわかっていた「45歳購入・完済80歳」という現実。これは、多くの40代男性が直面する数字です。広い玄関、断熱効果が高く美しい窓や壁、最新型の設備が整ったキッチンや浴室。それぞれの家を見学するたび、その家で暮らす家族の笑顔が目に浮かびます。前田さんは、「確かにそうなんだよなぁ……。ここで立ち止まって考える時間の余裕はないのかもなぁ……」そう、背中を押されるように契約を決断しました。
念願のマイホームを手に入れ、妻や子どもたちのはしゃぐ様子は嬉しい反面、前田さんには、お腹に重い石があるような感覚が拭えませんでした。
ローン完済はゴールではない…「老後破綻」を招く無茶な住宅購入の末路
多くの人が「ローンを完済すればバラ色の老後が待っている」と考えています。しかし40代での購入において、真の戦いは「定年後」に始まります。前田さんのケースで、老後破綻を招く3つの注意点を紐解いてみましょう。
空白の20年という恐怖
65歳の定年後、完済予定の80歳までには「15年間」の月日が流れます。60歳を過ぎて働き方が変わると、一般的には収入も少しゆったりとしたペースになるものです。そんな時期に、現役時代と同じ月々15万円(年間180万円)の返済を続けていくと、15年間の総額は2,700万円にのぼります。
セカンドライフを自分たちらしく楽しむためにも、この「2,700万円」をいまの収入だけで支えていけるかどうか、一度未来の自分に相談するよう考えるべきでした。
教育費と修繕費の「ダブルパンチ」
子どもたちが高校生・中学生といういまの時期は、教育費のピークに向けた準備期間でもあります。今後数年間は大きな支出が想定されますので、住宅ローンとの付き合い方には少し工夫が必要です。さらに築15〜20年が経過すると、給湯器の交換や外壁の塗装など、住まいの健康維持にも費用がかかってきます。
ちょうどセカンドライフに向けた貯蓄を加速させたいタイミングと重なるため、先に「いつ、どんなお金が必要になるか」を見積もっておいたほうがよいでしょう。
年金収支の罠
老後のゆとりを考えるうえで、「年金の範囲内で暮らせるか」という視点はとても大切です。もし年金見込み額が27万円で、ローンの返済が15万円あると、生活費に回せるのは12万円となります。前田さん夫婦にとって、これまでどおりの暮らしを楽しむには、少し心細い数字かもしれません。不足分を補うために、現役時代の貯蓄を毎月10万円ずつ取り崩していく生活は、精神的な不安にも繋がります。
「こだわりの家」を手に入れたことが、かえって老後の自由を制限してしまうという事態は、できるだけ避けたいものですね。