やむを得ない事情から「離婚」に踏み切る場合、子どもがいれば必ず「親権」をどちらが持つか決めなければならず、他にも「養育費」や「面会交流」等、取り決めるべき物事が多く存在します。本記事では「離婚前」に取り決めておくべき事項とそのポイントについて、自身も1児の母であり、子育てに関わる法律問題に詳しい弁護士・高橋麻理氏の著書『子育て六法』(日東書院本社)より、一部抜粋してご紹介します。
「養育費」を確実に払わせるには?離婚前に“子どものため”に取り決めておくべきこと【弁護士のアドバイス】 (※写真はイメージです/PIXTA)

離婚した場合、相手が低収入でも「養育費」はもらえるのか

子どもを連れて離婚する場合は、養育費について取り決めます。民法に基づき、離婚したとしても親は子を養う責任があるからです。

 

養育費のことで揉めて離婚成立が遅くなるくらいなら養育費はいらないと考える人もいますが、養育費は「子どもの権利」だと考えましょう。

 

子どもの成長とともに、想定以上にお金がかかることもあります。進路の選択をする際などに、経済的理由で選択肢が狭まってしまうことを避けるためにも、養育費の確保はとても大事なことです。

 

通常、養育費の金額は、双方の収入の額、子どもの年齢・人数をベースに算定します。裁判所が算定表を公表しており、離婚調停や訴訟ではこれを基準にして話し合い、判断がなされます。なお、これとは別に日本弁護士連合会(日弁連)が子どもの最善の利益を考慮して独自の新算定方式・新算定表を作成しており、インターネットで閲覧できます。

 

相手の収入が低いと、養育費もそれに応じて低額になり、親子が生活するのに十分な経済的基盤が築けないこともあると思います。各自治体のひとり親家庭相談支援窓口に相談してみるのがよいでしょう。

 

養育費は口約束にせず、調停調書、確定判決、和解調書、公正証書(執行認諾文言付きのもの)などの形にしておき、いざ不払いがあったとき、相手の給与を差し押さえるなどして強制的に養育費を確保できるようにします。

 

さらに、成長の過程で特別な費用がかかった場合には、その支払いについて改めて協議することも約束しておくとよいでしょう。

 

どちらかが再婚した場合、養育費の支払義務は当然には消滅しませんが、事情を踏まえて話し合い、減額したりゼロとしたりすることができます。話し合いが整わない場合は、調停手続きを利用し、最終的には裁判所の判断を求めます。

 

裁判所の判断では、養育費を払う側が再婚して子が生まれたとか、再婚相手の子と養子縁組したとかで扶養家族が増えた場合は、養育費が減額となるケースがあります。また、養育費を受け取る側が再婚し、子と再婚相手が養子縁組した場合も、事情によっては、養育費減額や免除となり得ます。