(※画像はイメージです/PIXTA)

「退職金」はまとまったお金が入るため、これを元手に資産運用を始めようと考えている方は少なくありません。しかし、一攫千金を狙って一括投資を行った結果、大失敗してしまう人も……。今回は、ファイナンシャルプランナーの牧元拓也氏が退職金を使ってまとまった資金を投資した61歳Aさんの事例をもとに、退職金の運用で失敗する人の原因と成功するためのポイントについて解説します。

退職金での運用に「成功する」ための3つのポイント

老後を見据え、これからますます自助努力が必要となるなかで、退職金が入ったことを機に投資を始めようという人は多いと思いますが、Aさんのように不安な毎日を過ごさないようにするためには、どのような点に注意すればいいのでしょうか?

 

リターンだけでなくリスクにも目を向ける

投資において、リスクの理解は必須です。多くの方はリスクという言葉を聞いて「損をする」「危険」「値下がりする」といったネガティブな要素をイメージされますが、運用におけるリスクは単に「価格の振れ幅」のことを指します。

 

※これは一般的なイメージ図であり、すべての金融商品が当てはまるものではありません。 出所:日本証券業協会ホームページより
[図表3]「リスクとリターン」でみる金融商品の特徴 ※これは一般的なイメージ図であり、すべての金融商品が当てはまるものではありません。
出所:日本証券業協会ホームページより

 

「リスクが大きい(高い)=価格の上下が大きい」、「リスクが小さい(低い)=価格の上下が小さい」ということです。また、リスクの大小によって期待できるリターンが変わってきます。

 

図表3で確認できるとおり、株式は「ハイリスク・ハイリターン」に位置づけられ、値動きもなく、まったくといっていいほど金利がつかない預貯金は「ローリスク・ローリターン」に位置づけられます。

 

仮に、Aさんのように全世界株式で年5~6%のリターンを想定して運用する場合には、どの程度の下落が予想されるかを理解しておく必要があります。

 

過去の値動きをみると、2008年のリーマンショックでは50%程度の下落があり、記憶に新しい2020年のコロナショックでは35%程度の下落がありました※。リーマンショックは極端だとしても、この先も“〇〇ショック”と呼ばれる状況になれば、35~40%程度の下落があると考えて投資をしたほうがいいでしょう。

 

※参考:MSCIワールドインデックス

 

Aさんの場合、全世界株式で2,000万円の一括運用をする前に、「投資した年に40%下落し、一時的に1,200万円になっている状況」を想像してみます。そこで不安のほうが大きいようであれば、投資金額を2,000万円ではなく1,000万円に減らしたり、全世界株式だけでなく世界債券にも分散して投資をしたりするなど、自分のリスク許容度にあった運用方法に変えることが大切です。

 

数回にわけて投資をする

上昇だけを考えると一括運用は非常に効率がいいですが、実際の市場が常に上昇し続けるとは限りません。一方で、あまりに回数を分けすぎると活用できない資金が生まれるため、非効率でしょう。

 

したがって、運用予定の資金を1~2年以内で数回に分けて投資をすることで、効率性を維持しながら値動きを分散させることが可能です。

 

運用の目的と目標を持つ

何のために運用するのか(目的)、いつまでにいくらにしたいのか(目標)を考えずにとりあえず投資を始め、失敗してしまう人は多いです。

 

「セカンドライフをより充実したものにするため、資金寿命を〇〇年延ばしたい」

 

「子どもや孫が安心して暮らせるように〇〇万円ずつ残してあげたい」

 

「インフレに負けないように運用するために、2~3%程度の運用を目指したい」

 

あくまで一例ですが、目的や目標をイメージすると、ご自身に合う運用方法が見えてきます。自分に合った運用方法を選択できると、運用中の不安や迷いに振り回されづらくなるでしょう。

投資初心者は「安心して眠れるか」を基準に

いかがでしたでしょうか? 投資を始めるにあたっては、運用の目的や目標を具体的にイメージし、リスクを確認し、数回に分けて運用するなど、ご自身に合った運用方法で取り組んでいただくことが大切です。

 

また、目的や目標を考えることが難しい、苦手という人は、投資をする前に「安心して眠れるか」を基準にすることもおすすめです。夜ベッドに入り、目を閉じたときに運用状況が気になって目が覚めてしまうようであれば、投資金額を減らしたり、よりリスクを抑えた運用を選んだりするようにしましょう。

 

いずれにせよ、退職金の運用はセカンドライフに大きな影響を与えることになりますから、慎重に検討しましょう。

 

 

牧元 拓也

株式会社日本金融教育センター

FP

 

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本記事は、株式会社クレディセゾンが運営する『セゾンのくらし大研究』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。