不動産投資は「家賃収入が不労所得になる」「節税対策になる」と耳にしたことがある人もいるでしょう。確かに不動産投資は、上手く活用することができるとメリットがたくさんあります。しかし、浅はかな知識で不動産投資を始めることは、大変危険です。本記事では、FP1級の川淵ゆかり氏が、Aさんの事例とともに、不動産投資の注意点について解説します。
手取り月50万円の40歳・大企業のサラリーマン「ワンルーム投資で不労所得」のはずが、一転「家計崩壊」…でも売るに売れない事情とは【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

当初の予定が大きく狂い、結婚まで流れてしまったAさん

さて、Aさんが3室目の物件を購入してまもなく、駅により近い場所に大型の新築ワンルームタワーマンションの分譲計画が発表されました。そして、このマンションが完成したあとにAさんが所有している物件の3室のうち2室が続けて空室になってしまったのです。

 

その後も空室はなかなか埋まらず、半年も過ぎたあとに家賃をそれぞれ1万円以上下げてやっと入居者が見つかることができた次第です。この空室期間も当然不動産投資ローンは返済し続けなければならず、その金額は月に約17万円、合計で100万円を超える貯金からの持ち出しとなってしまいました。

 

さらに、修繕積立金も急に値上がりすることになり、Aさんの当初のキャッシュフロー計画は大きく崩れてしまうことになります。

 

貯蓄が減ってしまい、急にマンション投資が怖くなったAさんは、今後の人生にも大きな不安を感じます。親身に話を聞いてくれていた彼女を幸せにする自信がないと、結婚の延期を申し出ますが、当然彼女は激怒。婚約は破棄となってしまいます。

 

その後もワンルームマンション投資を継続してきたAさんですが、入居者が変わる度に原状回復の費用がかかったり、年々家賃が下がったりで、年間の持ち出しは約50万円となってしまいました。

 

売却を決めるも売るに売れないワケ

40歳という年齢にもなり、将来が不安になったAさんは3部屋とも売却を決めますが、相場の売却価格がローン残債を上回るオーバーローンとなってしまい、その金額は3室合計で1,000万円近くとなります。

 

現在は、少しでも高く売れるように任意売却の専門家に相談しているAさんです。

不動産投資の成功/失敗はいつ決まるのか?

バブル期のときは不動産価格が右肩上がりでどんどん上がっていった時期ですから、短期運用で利益が面白いように出せた人もいらっしゃいます。

 

しかし、現在はこういった短期運用ではなく、長期での運用が一般的です。投資用の不動産物件を購入するためには長期の不動産投資ローンを組む人がほとんどです。ローンの返済を入居者からの家賃収入で賄っていきながら運用していきます。

 

返済期間は、住宅ローンと同様に35年といったところになりますが、ローン返済中はほとんど利益が出なくてもローン完済後は大きな利益が見込め、Aさんのように老後の生活の資金の足しになれば、と始める方も多いです。

 

不動産投資の利回りは5~10%と言われており、魅力を感じる人も多いのですが、本当に利益が出たかどうかは物件を売却するまではわからないのです。

 

つまり、物件売却までを視野にいれ、数十年という長期間で収益・費用の計算を積み上げていき、トータルでプラスなのかマイナスなのかで利益が決まり、最後に初めて成功か失敗かがわかるのです。

 

最後の売却に失敗すれば、投資期間中にいくら利益が出ていたとしても損失が確定し「やらなきゃよかった」と思ってしまうくらい、売却が投資に与える影響は大きいのです。

 

そう考えると不動産投資はなかなか難しいものですし、結果としてローン返済中に「失敗した」と諦めてしまう人もいたり、Aさんのように次から次へと物件を購入し首が回らなくなってしまったりする人も多いのです。

 

特にこれからは人口が加速度的に減っていく日本です。立地場所や売却時期などは不動産投資を始めるタイミングで十分に考えておいたほうがいいでしょう。もし、不動産投資の成功者という人から話を聞くのであれば、しっかり確認することをお勧めします。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表