金融広報中央委員会の調査によると、50代の「2人以上世帯」の平均貯蓄額は約1,253万円です。しかし他方で、「貯蓄ゼロ」の世帯が24.4%もあります。「50代・貯蓄ゼロ」から「老後の備え」もしなければならないとして、これからでも間に合うのでしょうか。シニア・プライベートバンカーの濵島成士郎氏が事例をもとに解説します。
50代の平均貯金額は「1,253万円」だが…教育費が嵩み「貯蓄ゼロ」の55歳同い年夫婦“もう老後は間に合いませんか?”【シニア・プライベートバンカーが回答】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「保険の見直し」で月5~6万円を捻出

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そこで、効果が高いのが保険の見直しです。Aさん夫妻が支払っている毎月の保険料は、生命保険の7万円をはじめとして、合計12万円です。学資保険(1.5万円)は子どもの大学入学に備えての貯蓄なので良いとして、問題は生命保険と医療保険です。

 

生命保険

保険は「必要な保障を必要な分だけ備える」というのが基本です。たとえば、夫の収入のみで暮らしている家族の場合、夫に万一のことがあれば家族はたちまち生活に困窮し、路頭に迷ってしまうでしょう。このような場合は十分な生命保険に加入する必要があります。

 

しかし、Aさん夫妻の場合、夫妻どちらかに万一のことがあっても、残された夫または妻の収入があります。住宅ローンも団信(団体信用生命保険)に加入していれば亡くなった方の残債は免除されます。したがって、足りない分だけ加入しておけばよいということになります。

 

そこで、仮にAさんが亡くなった場合のことを考えてみましょう。必要になるお金は主に以下の2つです。

 

(1)葬式・墓の費用
(2)妻の収入だけでは不足する分の生活費等

 

このうち、(1)は300万円の掛け捨ての定期保険があれば十分です。保険期間にもよりますが、月々数千円程度なので、夫婦それぞれが加入しても保険料は合計1万円前後です。

 

(2)については、後述する遺族年金も考慮した上で、「収入保障保険」を検討すると良いでしょう。収入保障保険は、死亡したら遺族が保険期間中、毎月「10万円」「15万円」等の一定の金額を継続して受け取ることができる死亡保険です。子どもが大学を卒業するまでの間、加入しておけば十分でしょう。万一の場合に保険金を毎月10~15万円を受け取るプランに加入するとして、保険料は夫婦合計で月1~2万円ほどになると思います。

 

夫の年収が600万円なのに、保険金が毎月「10万~15万円」で良いというのには理由があります。日本には「遺族年金制度」があり、遺族は年金をもらうことができるからです。

 

遺族年金には、国民全員がもらえる「遺族基礎年金」と、厚生年金被保険者がもらえる「遺族厚生年金」があります。また、「亡くなった人」の要件と「もらえる人」の要件がありますが、会社員は社会保険料が天引きされているので、「亡くなった人」の要件はほぼ満たすと思ってもらって結構です。

 

遺族厚生年金の「もらえる人」と、もらえる優先順位は以下の通りです。

 

・子のある配偶者

いない場合

・子(18歳になった年度の3月31日まで、あるいは20歳未満で障害等級1級または2級)

いない場合

・子のいない配偶者(年齢等で要件あり)

以下、生計を維持されていた父母等が続きます。

 

もらえる金額は「遺族基礎年金」が年額79万5,000円+子の加算額22万8,700円(令和5年4月分)です。

 

これに対し、「遺族厚生年金」は毎月の給料の額に応じて決まります。Aさん夫妻の場合、夫が亡くなったときの遺族厚生年金の額は年30万~60万円程度と思われますので、妻は、遺族基礎年金と合わせて年130万~160万円程度を(子どもが18歳になるまで)もらえることになります。

 

勤務先の福利厚生制度も確認しておきましょう。死亡退職金や死亡弔慰金、遺児育英年金などがある会社もあります。遺族年金に加えて、勤務先からそれらのお金がもらえるのであれば、すでに相応の保障があることになります。

 

医療保険

医療保険等についても知っておきましょう。実は、医療保険の優先順位はそれほど高くありません。なぜなら、日本には「高額療養費制度」があり、かかった治療費の自己負担額に月ごとの上限が設けられているからです。自己負担の上限額は年齢と収入水準に応じて変わりますが、Aさん夫妻の場合、月8~9万円程度で済むでしょう。

 

したがって、民間の医療保険等は、がんと診断されたときにまとまった額の「一時金」を受け取りたい場合や、入院時に個室を希望する場合(差額ベッド代が全額自己負担になる)に、必要な保障にだけ加入を検討すればよいでしょう。

 

こうやって保険を見直すことで、月5~6万円は浮くのではないでしょうか。これと、前述の無駄に払っている費用を削減した分を合わせれば、月6万円程度はセカンドライフのための資産形成に回せそうです。

「セカンドライフ」のプランと収支を考える

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資産形成を始める前に、どんなセカンドライフを送りたいか夫婦で話し合ってみてください。それ次第で必要なお金は変わってきますし、資産形成をしていくモチベーションにもなるでしょう。

 

・夫婦で素敵なカフェを開きたい

・地方で農業を始めたい

・海の近くでのんびり暮らしたい

 

こういったセカンドライフのプランを前提に、リタイア後に想定される収入と支出を考えてみましょう。

 

収入を確認する

まずは収入です。最初に公的年金を確認しましょう。毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」に年金額が記載されていますし、ねんきんネットでいつでも確認することが可能です。また、退職金や親からの相続等、想定される収入を把握しておきましょう。

 

想定される支出

次に支出です。毎月の生活費です。リタイア後の生活費はおおむね現役時代の7割程度が目安になりますが、今の延長線上ではないセカンドライフを目指すのであれば、生活費はどのくらい余分にかかりそうか、調べてみましょう。

 

そのほかに必要な支出として想定されるのは、住宅ローンの残債、趣味等を楽しむための費用、リフォーム代、介護費用、葬式費用等です。