金融広報中央委員会の調査によると、50代の「2人以上世帯」の平均貯蓄額は約1,253万円です。しかし他方で、「貯蓄ゼロ」の世帯が24.4%もあります。「50代・貯蓄ゼロ」から「老後の備え」もしなければならないとして、これからでも間に合うのでしょうか。シニア・プライベートバンカーの濵島成士郎氏が事例をもとに解説します。
50代の平均貯金額は「1,253万円」だが…教育費が嵩み「貯蓄ゼロ」の55歳同い年夫婦“もう老後は間に合いませんか?”【シニア・プライベートバンカーが回答】 (※画像はイメージです/PIXTA)

セカンドライフへの資産形成は「インデックスファンド」の「積み立て」

(※画像はイメージです/PIXTA)
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収入と支出の見通しがある程度わかれば、次はいよいよ資産形成です。前述のように、Aさん夫妻が無駄な出費をなくし、保険を見直した結果、月6万円を資産形成に回せるようになったとします。そのお金で「投資信託」を毎月「積み立て」しましょう。

 

投資信託の商品は「世界中の株式に投資するインデックスファンド」でOKです。証券会社は「ネット証券」で、税制優遇を受けられる「iDeCo」と「NISA」を活用しましょう。これが私のアドバイスです。

 

「世界中の株式に投資するインデックスファンド」とは、日本を含む先進国23カ国及び新興国24カ国の主要な株式の値動きを表す指数に連動するように設計された投資信託のことです。指数そのものの実績(過去30年間)は年平均8.1%のリターンとなっています。また、利息が元本に組み入れられ、そこにさらに利息がつく「複利」効果が得られます。

 

このインデックスファンドで毎月6万円の積み立てを65歳まで10年間続けた場合(投資総額720万円)、過去実績と同等の年平均8.1%であれば積立金額が約1,000万円、うまくいけば1,200万円以上になっている可能性もあります(費用・手数料は考慮せず。

 

なお、筆者が信頼できると判断した情報に基づき推計したものであり、将来の運用成果や元本を保証するものではありません)。

 

子どもの教育費がかからなくなれば、毎月の積み立て金額を増額することで、さらに資産を増やすことができるでしょう。これに退職金を加えれば、十分に豊かで素敵な人生を送ることができるのではないでしょうか。

 

なお、退職時に住宅ローンが残っている場合、選択肢は以下の3つです。

 

(1)退職金で一括返済
(2)従来の返済を継続して退職金は運用
(3)自宅を売却して完済

 

どうするかは、そのときの状況次第で判断するようにしましょう。

「iDeCo」と「NISA」はできれば両方使う

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iDeCoとは、「拠出時」、「積立期間中」、「受取時」のすべてで税制優遇がある年金制度です。Aさん夫婦は会社員なので、掛金の上限はそれぞれ月額2万3,000円(年額27万6,000円)となります。拠出金は全額所得控除となり、年末調整で所得税と住民税が還付されます。

 

上限いっぱい拠出した場合、所得税率10%だとすると住民税と合わせて5万5,200円が還付されます。大きいですよね。さらに積立期間中の運用益は非課税、受け取る時は「退職所得控除」か「公的年金等控除」を利用できます。

 

一方、NISAは運用益だけ非課税ですが、2024年からの新NISAは年間360万円、生涯投資枠1,800万円まで非課税枠のある、とても良い制度です。iDeCoは非課税メリットが大きい反面、原則として60歳までは受け取ることができません。これに対し、NISAは運用益のみが非課税ですが、いつでも解約が可能です。さらに最大月30万円(新NISAで毎月積み立ての場合)まで投資可能です。可能な限り両方活用しましょう。

 

ここまでみてきたように、Aさん夫妻のように「55歳・貯金なし」でも全然遅くはありません。大事なのは「すぐ始める」ことです。投資期間が長いほど複利効果は大きくなるので、資産形成に最も必要なのは「時間」なのです。すぐに家計を見直して、できる範囲で積み立て投資を始めていくことをおすすめします。

 

 

濵島成士郎(株式会社WealthLead代表取締役シニア・プライベートバンカー)

1965年神戸市生まれ、千葉県松戸市出身。小学2年生から國學院高校時代までは剣道、信州大学経済学部入学後は夏のバイク、冬のスキーに没頭。

1988年4月、新日本証券(現みずほ証券)入社。生まれ故郷の神戸支店を皮切りに営業店、本社営業企画部門と人事部門、グループ会社での金融プロフェッショナル教育に従事。横浜西口支店等、4店舗の支店長も務める。2度の合併(2000年新光証券、2009年みずほ証券)はあれど、30年に渡る証券マン人生の大半を富裕層個人と中小企業の資産運用、M&A、IPOに携わる。

駆け出しの頃に飛び込みで開拓したお客さまが後年上場を果たし、そのカッコいい姿を見て「いずれ俺もああなりたい!」と起業を夢見るようになる。2011年の東日本大震災を目の当たりにして、「やりたいことに挑戦しないまま死んだら絶対に後悔する!」と若いころからの夢である起業を決意。

2017年12月末みずほ証券を退職、2018年3月、53歳の時に株式会社WealthLeadを創業。全国で約280名(2023年8月現在)しかいない、日本証券アナリスト協会認定シニア・プライベートバンカー。YouTube『よくわかる資産運用チャンネルbyWealthLead』の運営もしている。