社会保険料控除で親の税金が安くなる
国民年金保険は、社会保険料控除の対象となります。社会保険料控除によって、年末調整や確定申告で所得税・住民税を軽減することができます。
親が保険料を支払った場合は、親自身の社会保険料控除とすることができます。つまり、Aさんが第一子のために国民年金を支払った場合、自分の税金を減らすことができるのです。
Aさんは、年収500万円です。仮に所得税率を10%、住民税率を10%とした場合、第一子のために支払った保険料に対して社会保険料控除を適用することができ、1年間におよそ4万円の税金の軽減を見込むことができます。
学生納付特例制度を利用した場合
≫メリット
・年金負担額が減る
≫デメリット
・特例制度の免除となった分の年金額は増えない
上記制度を利用して保険料を免除とした場合、保険料の支払いは必要ありません。保険料を1万6,520円とした場合、2年間でおよそ40万円の保険料負担を避けることができます。その代わり、免除となった期間は年金額に反映されません。
令和5年度の年金水準で考えると、満額納付と学生特例を利用した場合では65歳からの受取年金に月額3,313円の差が出るのです。10年間受け取り続けると、累計の差額はおよそ40万円。つまり、10年以上年金を受け取るのであれば学生特例を利用せず、20歳から年金保険料を支払ったほうがメリットが大きくなります。
人生100年時代、子の未来のために受給できる年金を増やす?それとも…
Aさんも、保険料を支払ったほうがメリットが大きいということは理解していました。にも関わらず、Aさんは学生納付特例を選択しました。第二子の大学費の支払いが来年に迫っていたため、支出を分散する必要があったからです。
「年金を支払ってあげたほうがいいとは思っていましたが、第二子の大学費用も重なり、家計的にも少々キツイ部分がありまして。上の子には社会人になったら追納をするように伝えています」
学生納付特例は追納という制度もあり、申請後10年以内であれば遡って保険料を支払うことができます。10年を経過すると追納はできなくなりますので注意が必要です。
まとめ
年金保険料を支払うことができるのであれば、支払ったほうがメリットが大きいのは間違いありません。しかし、ライフステージや家計の状況によっては、ほかのために充てたほうがいいケースも考えられます。保険料の納付を優先するがために、教育費を支払うのが困難になってしまった……といったことがないよう、家計やライフステージの状況に合わせたプランニングを行うことが大切となります。
伊藤 貴徳
伊藤FPオフィス
代表