給与は全然上がらない、なのに物価は上がるばかり。老後を考えれば年金はあてにならないし……そんな話ばかりで、とても「子どもを持つ」ことは考えらえないと、はじめから「夫婦ふたりだけの人生」を選択して結婚する人たちが増えています。経済的に余裕があり、悠々自適。しかし「子を持たない」ことへの不安は尽きないようです。みていきましょう。
年収1,000万円超40代×30代の「子のない夫婦」…子育て世帯を横目に悠々自適な生活も、30年後に直面する「哀しい顛末」 (※写真はイメージです/PIXTA)

子のない夫婦の家計に「子育て世帯」から羨望の眼差し

「子どもにはお金がかかる→2人目」はムリという、昨今の夫婦。そのような背景もあり、そもそも完結出生子ども数がゼロ人、つまり「子のない夫婦」は「2005年」に5.6%→「2010年」6.4%→「2015年」6.2%→「2021年」7.7%と増加傾向。もちろんこのなかには、望んでもできなかったという夫婦もいるでしょう。また未婚女性のなかで「結婚するが子どもは持たず、仕事を続ける」という、いわゆる「DINKs」を望む人が、出生動向基本調査の2015年調査では4.1%だったのが、2021年調査では7.7%と増えています。「結婚=子ども」という価値観も少しずつ変わってきているのかもしれません。

 

このようなDINKs。基本的に共働きの夫婦で、子どもの育児・教育費がかからない分、家計に余裕があり、趣味にキャリアアップにと次々と自己実現していく姿には羨望の眼差しが送られます。

 

たとえば「夫婦ともに大卒で正社員のDINKs世帯」、そんなふたりのお金事情を考えてみましょう。厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大卒男性会社員(平均年齢42.4歳)の平均給与は、月収で40.0万円、年収で658.4万円。そして大卒女性会社員(平均年齢36.0歳)の平均給与は、月収で30.0万円、年収で478.8万円。夫婦合算で1,000万円を超えます。

 

子どもがいれば、まずは教育費を優先……みたいな話になりますが、そこはDINKs。すべて自分たちのために使うことも、貯めることもできるわけです。子どもの進学を見据えると背筋が凍る……そんな思いをしている世の中の子持ち世帯にとっては、ただただ羨ましいのひと言です。

 

子のない夫婦のリスクは「後期高齢者」に突入してから拡大

一方で、当の本人たちからは「子どもがいない」ことへの不安が語られることがあります。お金があろうとなかろうと、年を重ねていけば介護リスクが高まります。要介護の割合は70代前半では5.8%、70代後半では12.7%、80代前半では26.4%、85歳以上で59.8%に。認知症の有病率も同様で、70代後半では13.6%だったのが、80代前半では21.8%、80代後半では41.4%に上昇します。後期高齢者となる75歳以降、介護リスク、そして認知症リスクは飛躍的にアップするのです。

 

介護が必要になったら、誰が介護をするのか……厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、トップは「同居する配偶者」で22.9%、「同居する子」が16.2%と続きます。DINKsは子どもがいないわけですから、自ずと配偶者に負担がかかるようになるでしょう。夫婦の平均的な年齢差を考えると、まずは夫の介護を妻が行い、看取ったら、次は妻が介護される側に……となりますが、子どもがいない、さらに近隣に親しい身内もいないとなると、サービス事業者に頼るか、老人ホームへの入居が既定路線になります。

 

これらはすべて「お金」で解決できることではありますが、頼る人がいない晩年を想像してか、どこか寂しさを感じさせるDINKsも。