日本では医療保険制度が機能しているため、医療費の自己負担率は低く抑えられています。急性虫垂炎の治療を例に挙げると、自己負担額はアメリカの約20分の1です。しかし、少子高齢化が進む日本では、医療費の増加が大きな問題となっています。今後“医療費と自己負担率”の高騰を少しでも抑えるため、国民一人ひとりにできることはあるのでしょうか。小児科医の秋谷進氏が解説します。
急性虫垂炎の治療「日本は30万円、アメリカは600万円」の衝撃…安すぎる?日本の医療費の実態【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

増大する医療費への「2つ」の対処法

とはいえ、医療費が高くなり生活が苦しくなる事態はなんとかして食い止めたいもの。わたしたちができることはなんでしょうか?

 

1.予防医療の推進

まずはじめにできることは「予防医療の推進」です。

 

可能な限り病気を予防し、早期発見ができれば、重症化し医療費がかさむ事態を防ぐことができます。健康な生活習慣を送り、定期的に健康診断を受けるなど、日本においても先述した「セルフメディケーション」の意識が必要です。

 

2.本当に必要な医療だけを享受する

また、「本当に必要な医療だけを受け取る」ことも重要です。

 

たとえば、みなさんは「ヒルドイド問題」を知っていますか? 保湿効果に優れている「ヒルドイド」を求め病院を訪れ、治療目的ではなく美容目的として処方してもらう人が増えた問題です。あるメディアでは、これが50~70億円もの医療費増大につながっていると報じられました。

 

もちろん本当に乾燥肌が強く、保湿剤が必要な人もいるでしょう。しかし、なかには不当に必要以上の処方を求める人もいます。その大半は悪気がない、もしくは悪用している自覚がないのかもしれませんが、これは日本医療制度を悪用しているともいえる事態です。こうした問題が、医療費増大に寄与しているといえます。

 

また、日本臨床外科学会のホームページでは、日本は諸国に比べ受診回数が多いことや医療費における医療費比率が高いことが指摘されています。

 

みなさんの心がけひとつで日本はもっと豊かになります。「自分だけよければいい」と思わずに、日本の医療のことを、頭の片隅に考えて受診してみてくださいね。

 

 

秋谷 進

小児科医