日本では医療保険制度が機能しているため、医療費の自己負担率は低く抑えられています。急性虫垂炎の治療を例に挙げると、自己負担額はアメリカの約20分の1です。しかし、少子高齢化が進む日本では、医療費の増加が大きな問題となっています。今後“医療費と自己負担率”の高騰を少しでも抑えるため、国民一人ひとりにできることはあるのでしょうか。小児科医の秋谷進氏が解説します。
急性虫垂炎の治療「日本は30万円、アメリカは600万円」の衝撃…安すぎる?日本の医療費の実態【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

海外と比べると“非常に安い”日本の「入院・手術費」

医療費のなかでも、大きな費用がかかるイメージのある「手術費用」をみると、日本がいかに諸外国に比べて自己負担額・自己負担率が少ないかがわかります。

 

日本で急性虫垂炎になった場合、入院・手術費用は一般的に30万円ほどです(ただし、特別個室に入った場合などは追加料金がかかります)。

 

さらに日本では、医療費が一定額より高くなると国が負担してくれる「高額療養費」という制度があります。たとえば、集中治療室の使用や手術後のトラブルなどで、医療費が「高額療養費」に定められた上限を超過した場合、その超過分を国が負担してくれるようになっているのです。

 

一方、アメリカで急性虫垂炎にかかった場合、ニューヨークの私立病院での入院・手術費用は約599万5,000円〜816万5,000円、ハワイ・ホノルルでは約337万3,000円と、なんと日本の10倍~20倍以上の値段がかかります。

 

手術に数百万円といった費用をポンと出すことは当然難しいため保険が使われますが、保険を利用したとしても補填できる金額には限りがあります。さらに、保険会社が契約している病院があって、「この病院ではA保険なら使えるが、B保険は使えない」なんていうこともざらです。

 

そのため、どの保険を使うかによって、どんな医療が受けられるかが変わってきます。さらに、初診料だけで約2万円~4万5,000円(150〜300ドル)の請求を受けることも普通。アメリカでは原則、病院が自由に価格を決定しているためです。

 

他方、急性虫垂炎に罹った場合の負担額について、カナダの私立病院では約93万4,800円〜133万2,500円、イギリス(ロンドン)では約62万円〜72万円となっています。アメリカよりは高額ではないものの、日本に比べるとかなり自己負担額が大きいですよね。

 

そのため、欧米では「セルフメディケーション」といって、自分自身で健康管理を行い、病気にかからないよう予防することが求められているわけです。

 

日本の医療費が、決して海外と比べて「高すぎる」わけではないことがわかっていただけたのではないでしょうか。