多くのサラリーマンは、60歳の時点で「定年を機に引退するか」「働き続けるか」という選択を迫られます。現状、60歳で引退するサラリーマンは全体の1割強。65歳まで無収入となり、以降受け取る年金額にも差が生じることになりますが、「60歳リタイア」という選択は本当に正しいといえるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
“主力メンバー”から外れ、給与も減るなら…60歳でリタイアの元・会社員を待ち受ける、「定年後も働き続けた同期」との〈年金格差〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

5年分多く厚生年金保険料を納めた結果…「65歳引退」のサラリーマンの年金額は?

上にみた通り、給与減や仕事へのかかわり方の変化を受け入れられず、60歳時点で「完全リタイア」を決断する人も少なからずいます。ほかにも「十分な貯蓄がある」「副収入がある」等、理由はさまざまでしょうが、定年を迎えたサラリーマンのおよそ7~8人に1人にあたる12.7%の人が、このタイミングでサラリーマン人生にピリオドを打っているのです。

 

年金受給が始まるまでの5年間、収入は途絶えることになりますから、生活費を賄うには貯蓄を取り崩すほかないでしょう。また、そうした不安に加え、60歳以降も働き続けるサラリーマンとの間に生じる将来の「年金格差」も無視できません。

 

実際、どれほどの差がつくのでしょうか。大卒の男性サラリーマン(正社員)の平均給与から考えてみます。

 

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、55~59歳の平均給与(所定内給与)は月52万5,700円、推定年収は857万円です。大学卒業から60歳の定年退職まで平均的な給与を受け取り続けてきたとしたら、65歳から手にする公的年金は、厚生年金部分が月11~12万円。国民年金と合わせると月18万円ほどになる計算です。

 

一方、65歳まで働いたサラリーマンの年金額はどうでしょう。60~64歳の平均給与は月32万1,000円で推定年収は490万円。年収は定年前の60%ほどの水準になりますが、5年分多く厚生年金保険料を納めたことで、年金額は厚生年金・国民年金と合わせて19万~20万円ほどになります

 

月1万円強の年金差について、「大きな差ではない」と考える人もいるでしょう。

 

しかし、直近のように食料品・光熱費が高騰を続ける局面では、世帯によっては1万円が死活問題にもなり得ます。

 

また、平均的な日本人に待ち受ける「長い老後」についても考えておく必要があります。内閣府の調べによると、2019年の日本人の平均寿命は男性81.41年、女性87.45年。65歳で年金を受け取り始め、男性の平均寿命である81歳まで生きた場合、60歳でリタイアした人と、65歳まで働き続けた人が受け取る年金額の差は200万円近くにも及ぶのです。

 

年齢を重ねれば病気やケガのリスクが高まるため、その分、医療費負担も発生しやすくなるでしょう。また、冠婚葬祭や自宅の修繕など、お金のかかるイベントは老後も続きます。「貯蓄はいくらあれば安心」とは一概に言い切れませんから、心身ともに健康なのであれば60歳で完全引退とはいわず、また65歳を過ぎても働き続けるという選択をすべきなのかもしれません。

 

仕事を通じ、「社会参加」の実感を得たり、「人との出会い」に生きがいに感じたりと、働くことには収入以外のメリットも多いのです。

 

「定年退職はまだまだ先」という現役世代のサラリーマンは、老後の不安を少しでも解消するために、早いうちから投資信託等の積み立てで複利運用を行ったり、住居や自動車等にかかる固定費の削減に努めたりと、資産形成と支出削減のための準備を同時並行で進めておきたいところです。