多くのサラリーマンは、60歳の時点で「定年を機に引退するか」「働き続けるか」という選択を迫られます。現状、60歳で引退するサラリーマンは全体の1割強。65歳まで無収入となり、以降受け取る年金額にも差が生じることになりますが、「60歳リタイア」という選択は本当に正しいといえるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
“主力メンバー”から外れ、給与も減るなら…60歳でリタイアの元・会社員を待ち受ける、「定年後も働き続けた同期」との〈年金格差〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

定年を迎えたサラリーマンの9割弱は「まだまだ働きます!」

大半のサラリーマンは、60歳で定年を迎えます。

 

とはいえ、そのタイミングで完全に現役を引退する人は少数派。厚生労働省の『高年齢者雇用状況等報告』によると、60歳定年制を採用している企業で21年6月~22年5月の間に定年を迎えた37万9,120人のうち、「定年退職」したという人はわずか12.7%。一方で、「雇用継続」を選択した人は87.1%に上ります。

 

60歳を過ぎても働く理由は人それぞれですが、内閣府の調査によると、60~69歳の人が働く理由は「お金を得るため」というものが61.6%で最多。2番目以降には「社会の一員として、務めを果たすため」(13.4%)、「自分の才能や能力を発揮するため」(6.5%)、「生きがいをみつけるため」(6.5%)といった回答が続きます。

 

10台後半からすべての年代において、「お金を得るため」が最多ですが、その割合は年齢を重ねるごとに低下。70歳以上になると「お金を得るため」に働く人の割合は40.8%にまで減少し、反対に「生きがいをみつけるため」が25.3%にまで上昇しています。

 

2013年に「高年齢者雇用安定法」が制定され、25年4月以降、企業には65歳までの雇用確保が義務付けられることになっており、定年以降も働ける環境は整えられつつあります。定年まで勤めてきた職場で継続して変わらぬ仲間と一緒に働けることは大きなメリットですが、雇用形態は「嘱託社員」や「契約社員」へと変更になり、50代の頃に比べて大幅に給与が減ることを覚悟しておく必要がありそうです。

 

また給与だけでなく、仕事の内容も大きく変化するといいます。

 

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、約4割の企業が、定年後の仕事の内容について「定年前と同じ仕事であるが、責任の重さが軽くなる」としています。

 

給与の大幅な減少に加え、仕事への関与の仕方も「主力メンバー」としてではなく、「サポート役」としてかかわるケースが増えることもあり、60歳定年後の継続雇用を選択したはいいものの、仕事への意欲を失ってしまう人は少なくないようです。