「出世」をめざすか、「転職」に踏み切るかを判断するには?
同じ役職に就いていても、学歴や年齢によって年収には大きな差があることをみてきました。
ただ、上の数値はあくまで平均値。極端に高年収の人が全体を引き上げていたり、反対に低年収の人が押し下げていたりという事態が考えられます。そこで、前出の厚生労働省の調査で所定内給与額の分布をみていきましょう。
「非役職者」の中央値は27万9,800円。上位10%で42万8,600円、下位10%で19万4,300円。「22万~28万円未満」がもっとも多く、役職に就いていない男性サラリーマンの31.3%がこの6万円のレンジに収まっています。
「係長」の中央値は36万2,300円。上位10%は50万3,600円で、下位10%が27万2,100円。ボリュームゾーンは「30万~38万円未満」で、ここに38.3%ほどの「係長」が集まっています。続いては「課長」。中央値は46万6,400円で、上位10%で68万9,200円、下位10%で32万6,800円。「課長」の31%が「40万~50万円未満」の範囲にいます。
そして部長。中央値は54万9,100円で、上位10%で86万7,300円、下位10%で36万5,200円。上位10%と下位10%では、同じ「部長」でありながら、50万円もの月収差があることがわかります。またボリュームゾーンをみていくと、「60万~70万未満」に「部長」の16.7%が集中しています。
多くの企業では、部長以上の役職者といえば役員になりますので、サラリーマンとしての出世のいったんの終着点は「部長」ということになるでしょうか。
上にみた通り、大卒・男性部長の平均年収は1,000万円ほど。これが従業員規模1,000人以上の大企業なら月給76万7,600円で、推定年収は1,269万円。定年時には3,000万円超の退職金を受け取れる可能性もあり、まさに勝ち組。
それだけの待遇に恵まれた企業であれば、給与アップのために「出世」をめざすモチベーションも湧くことでしょう。
しかし、部長の下位10%は月給36万円程度で、30代後半の大卒・正社員の平均月給と大体同じ。「必死に働いて部長になったのに。これじゃ報われないよ」と落ち込まざるを得ない水準です。
もともとの給与水準が低い会社では、一個人の頑張りによって大幅な給与増を実現することは容易ではありません。
自身の給与を同年代・同じ役職に就いているサラリーマンの給与分布と照らし合わせ、「中央値未満」にいる場合、勤め先で「出世」をめざすよりも、「転職」に踏み切ったほうが、その後の給与アップの可能性は高まるかもしれません。