将来受け取る年金を増やすための対策は?
2022年4月分以降、国民年金は満額で6万4,816円。また厚生年金は平均的な収入(平均標準報酬43.9万円)で40年間働いた場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金)の給付水準として、21万9,593円としています。
厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』で年金支給状況の実態をみてみると、国民年金受給者は平均月5万6,479円、厚生年金受給者は平均月14万5,665円を受け取っているようです。厚生年金を男女別にみると、65歳以上男性で16万3,380円、65歳以上女性で10万4,686円です。
上の表に挙げたような20~60歳までずっと平均給与を手にしてきたサラリーマンの場合、65歳で手にする厚生年金は月10万3,000円。満額の国民年金を足して月17万円ほど受け取れる計算です。このようなシミュレーションが、「ねんきん定期便」をみればわかる訳です。
総務省『家計調査』(2022年)によると、65歳以上の高齢夫婦(無職)の消費支出は月23万6,696円。税金・保険料も含めた実支出は26万8,508円に上ります。元・サラリーマンの夫と専業主婦の妻という老夫婦が平均的な暮らしをするとなると、月3万円ほどの赤字が発生することになります。
老後生活が30年間続くと仮定すれば赤字の総額は1,000万円超。あくまで統計に基づく仮の話ですが、平均的な稼ぎを得ていたサラリーマンであっても、年金だけで暮らしていくことはできないというのが現実です。
「ねんきん定期便」に記された見込額が「少ない」と感じたら、年金を増やすための対策を講じる余地はあります。
たとえば、本来なら年金を受け取り始める65歳以降も働き続けるという選択。厚生年金は平均標準報酬の額と被保険者であった月数で計算するため、加入上限の70歳まで働き続けることで「被保険者であった月数」が増え、年金額を増やせるのです。保険加入期間を増やすことによる効果に加え、受給開始年齢を70歳まで遅らせることで、繰り下げ受給による増額率も反映されるため、受け取れる年金額を大きく増やせます。
また、言わずもがなサラリーマンとしての安定収入があるうちは、公的年金以外に個人型確定拠出年金「iDeCo」を活用した積み立てなど、自助努力による老後資金作りを進めておくことも重要です。
ただ、上記のような対策が可能なのは、早い段階で将来の「低年金」を認識できていた場合に限られます。50代のうちに「年金だけじゃ暮らせないかも」ということに気がついていれば、十分に対策を講じられます。反対に、65歳になって初めてその事実に直面したのでは、手遅れになりかねません。年に1度の「ねんきん定期便」には必ず目を通すようにしたいものです。