どんな会社の株を買うか検討する際、とりあえず「大きな会社」を選んでおけば安心、と考える投資家は少なくないでしょう。しかし、表面上の数字だけで投資するか否かを判断するのは早計かもしれません。本稿では、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が「売り上げ」「利益」「時価総額」という3つの観点から、それぞれが“大きい”会社であっても慎重に目を向けるべきポイントについて解説します。
“大きい会社”の株=安心は本当か?…会社の「売り上げ」「利益」「時価総額」をみるときのポイント【株式投資のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「売り上げ」の大きさだけに目を奪われてはならない

売り上げが大きいということは、その会社の製品やサービスが多くの顧客に普及しているということでもあります。それに伴って、会社の知名度も当然高くなります。消費者向けの製品やサービスを提供する会社ならば、なおさらでしょう。

 

ですから、そういう会社は今後ひどく低迷することはないだろう、その製品やサービスは売れ続けるだろう、と思う投資家は少なくないかもしれません。

 

しかしそのように考えるのは早計です。

 

営利企業の目的は、利益を挙げることです。たとえ売り上げが多くても、そのために経費をたくさん使っていたとすれば、利益は小さくなってしまうことを忘れてはなりません。

 

たくさん宣伝する、たくさん出店する、よその会社を買収して売り上げを加算する、などすれば売り上げは大きくなるでしょう。しかし、かけた費用以上の売り上げが生み出せない場合、そうした行為は損失にしかなりません。

 

街に新しいお店ができて、お客さんも入っていたようだけど、いつの間にかなくなっていたという光景はよく目にするのではないでしょうか。どんなに売り上げが大きくても、それ以上の費用を使っている赤字店舗は、当然成り立たないのです。

 

ですから、どこかの会社の株を買うかどうか検討する際は、売り上げの大きさだけでなく、同じく大きな利益が出ているかどうかに目を向けなければなりません。

株式投資家が理解しておくべき「会社の利益」の基本的な構造

さらに、利益が大きい会社であっても、安心して株を買えるという訳ではありません。

 

利益というのは会計上いくつかに分類されています。たとえば以下のようなもの。

 

【①営業利益】
営業活動による利益(売り上げ-売り上げ原価-販売費と一般管理費)

 

【②経常利益】
通常活動時の利益で、受取利息や支払利息などを含む(営業利益+営業外収益-営業外費用)

 

【③当期純利益】
税金支払い後の最終的な利益(経常利益+特別利益-特別損失-各種税金±税金調整額)

 

固定資産売却などによる特別利益が加算されていない【①営業利益】や【②経常利益】も大きいに越したことがないのは当然ですが、何はともあれ、最終的に【③当期純利益】が伴っていなければ「儲かっている会社」とはいえません。

 

マスコミの報道などでは、売上高や営業利益だけが注目されがちです。

 

しかし、実際の利益構造を確認した上で、その大きさを計ることが重要なのです。

 

さらにもう一歩踏み込むと、会計上の利益と実際の手元のキャッシュにも相違があることには注意が必要です。会計の仕組み上、売り上げが挙がったもののまだ入金されていなかったり、お金は支払ったものの減価償却により分割で経費計上される資産があったりして、会計上の利益=残ったお金とはならないのです。

 

ですから、売り上げと各種利益がともに大きい会社であっても、キャッシュフロー計算書を確認し、本当に大きなキャッシュを稼いでいるかどうかも確認したほうがよいでしょう。

 

また、大きなキャッシュを稼ぎ続けている会社は、基本的に資金に余裕があるはずです。そうした会社への投資を検討する際は、自己資本比率にも目を向け、負債の割合が多くないかどうか確認しておくとなおよいかもしれません。