親として、子供に充実した教育を受けさせたいと思う気持ちは当たり前のことです。しかし、無計画に教育費を嵩ませてしまうと、家計を深刻な状況に陥らせる事態もあり得ると、FP1級の川淵ゆかり氏はいいます。本記事では、Aさんの事例とともに、教育費破産のリスクについて解説します。
「老後の頼りは息子だわ!」文京区に取り憑かれた年下妻が〈激烈教育ママ〉へと変貌…年収850万円の58歳、内気な夫の怯え【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

文京区に引っ越したAさん夫婦

Aさんは家庭用洗剤などを製造する大手企業に務める年収850万円の58歳男性です。14歳年下の44歳になる妻と19歳になる長男との3人暮らしです。約20年前の結婚したころに1度保険の相談に来られたAさんご夫婦ですが、その後、家庭に大きな変化がありましたので、了解を得てご紹介いたします(※プライバシーを考え、脚色して記載しています)。

 

Aさんは、38歳のときに24歳の同じ職場の女性と結婚しました。Aさんは物静かなタイプで天体観測の趣味があり、星座に詳しく、その楽しげに語る姿に、Aさんの妻は心惹かれたそうです。結婚から2年、Aさんが40歳になるころに長男が産まれ、数年後には奥さんの勧めで郊外の社宅から文京区の中古マンションを購入して住むようになりました。

子育て環境が充実している文京区

文京区は、東京大学を始め、お茶の水大学、日本女子大学など有名な大学が存在する地域ですが、小学校からも有名校が多く、国立大学の付属小学校が3校あるほか、優秀な公立小学校も複数あります。また、魅力のある中高一貫校が数多く、有名私立中学への進学率もトップクラスなのが文京区です。そのため、教育熱心なご家庭が引っ越してくることから、文京区の18歳未満の人口は次のグラフのように年々増え続けています。

 

※「文京区子どもの貧困対策計画」より引用 https://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0254/5327/shiryou1.pdf
[図表1]18歳未満の児童人口の推移(文京区) 資料:文京区子育て支援計画(令和2年度~令和6年度)及び文京区人口統計資料(各年4月1日現在)※1
 

お子さんの多いエリアですから当然習い事も充実しています。ですが、あれもこれも、と習い事に通わせると家計にもお子さんにも大きな負担になってしまうため、注意が必要です。

14歳下妻、「激烈教育ママ」へと変貌するまで

国公立の小学校というとお金がかからなそうなイメージがありますが、私立中学の受験のための家庭教師や塾代といった費用がかかります。しかも高校受験のない中高一貫校を希望するとなると、中学受験にはそれこそ必死になる親御さんもいらっしゃいます。

 

Aさんの奥さんも長男ができたころから息子さんの将来のことを真剣に考えていました。Aさんは出世欲があまりなく、大人しくて家でも天体望遠鏡を覗いていて、出不精なタイプです。知り合ったときはそんなところに魅力を感じていた奥さんも、出世レースに遅れを取っているAさんを見ていると物足りなさを感じていきました。

 

奥さんも結婚まではAさんと同じ会社で働いていましたので、知っている人の昇格の話を聞くとイライラしてきます。ほかのママ友との競争意識も相まって、「うちの息子はいい学校に入れて、大きな会社で出世街道をガンガン進んでもらわないと! 夫は年も離れているし、老後の頼りは息子だわ!」と教育熱心な母親へと変貌していきました。

 

Aさん一家は奥さんのこうした思いで、小学校受験のために文京区内に引っ越してきたわけです。このとき課長職に就いていたAさんは、すでに45歳になっていましたが、中古マンションの購入のために初めて住宅ローンを組むことになりました。

 

Aさんは息子さんの教育にのめり込む妻の姿に、だんだんと恐怖すら感じるようになったと言います。