(※写真はイメージです/PIXTA)
50歳バツイチ男性が孤独に沈んだ理由
20年前に離婚を経験して以来、Aさん(50歳)の心からは少しずつ「他人への信頼」が消え失せていきました。「あいつ離婚したんだぜ」といわれることを嫌がるあまり、学生時代の友人や家族とも自ら距離を置くようになります。
しかし本来のAさんは、大学時代に写真サークルに所属して人の笑顔を撮るのが好きな、優しく好奇心旺盛な青年でした。旅先でもすぐに人と打ち解け、後輩からも慕われるような一面を持っていたのです。それが、プライベートの離婚経験や、仕事が上手くいかないもどかしさのなかで、周囲に対して心を閉ざし、徐々に心の余裕を失っていってしまいました。
そんなAさんですが、離婚後に始めた不動産投資が驚くほど成功し、あれよあれよという間に約3億円の資産を築き上げています。
本業の会社員としては目立つ実績のなかったAさんが、これほどの資産を作れた背景には、本人の努力だけでなく大きな時代の追い風がありました。20年以上続いた歴史的な低金利や、都心を中心としたマンション価格の高騰、コロナ後に拍車がかかった不動産バブルなど、運の要素も多分に含まれていたといえます。離婚後に浪費ではなく投資に向かった判断は正しかったですが、こうした波に乗り、なにより「致命的な失敗を避けた」ことが、Aさんの最大の成功要因でした。
しかし、十分な資産を手にしたことで、Aさんの心には「お金がある」という傲慢なプライドが芽生えはじめます。彼にとって“成功者の象徴”として憧れだったタワーマンションへと住まいを移しました。休日はエレベーターで下に降りることすら億劫がり、ラウンジで一人スマホをいじりながらコーヒーをすすり、併設のジムで汗を流す――そんな自己陶酔の時間が、彼の日常となったのです。
「出世できないのにタワマンに住んでいる」と噂され…
タワマン生活を始めたものの、そこでも近所付き合いはなく、結局は一人ぼっちの時間が大半を占めていました。Aさんのお金を目当てに寄ってくる女性も多かったそうですが、過去の離婚経験が邪魔をして、Aさんはどうしても心を許すことができなかったといいます。
会社でも「Aさんはタワマンに住んでいるらしい」と噂になりました。しかし、仕事では部下に追い抜かれ、出世レースからも完全に外れていたため、周囲から羨望の眼差しを向けられることはありませんでした。これだけの資産があれば会社を辞めてもよさそうなものですが、「せっかく投資で増やしたお金を、日々の生活費で目減りさせたくない」という考えから、冷ややかな視線に耐えながら席にしがみつき続けました。
当然、職場でのストレスは限界まで溜まっていきます。Aさんは休憩時間になるとスマホでネットの掲示板やSNSへ、他者への批判的なコメントや上から目線の悪口を書き込むことで鬱憤を発散させていました。
しかし、その悪癖さえも、やがて社内の人間に突き止められてしまいます。「Aさんって、お金持ちみたいだけど気持ち悪いよね」と、女子社員たちが陰で話しているところを耳にした彼は、さらに心を閉ざしていきました。会議では他人の揚げ足ばかりを取り、部下や周囲に嫌味を振りまくようになった結果、ついにリストラの対象となり、会社を追われることに。
絶望した退職の夜、Aさんはヤケを起こしていままでになく飲み歩き、フラフラ車道へと出てしまいました。その直後、車にはねられ、瀕死の重傷を負うという最悪の暗転を迎えてしまったのです。