従業員が辞めても補充なし…人が消えていく老人ホーム
有力な選択肢とはいえ、希望すれば誰でも老人ホームに入居できるものではありません。やはり入居に際し気になるのは費用。厚生労働省の調査によると、元会社員などの厚生年金受給者の年金受取額は、国民年金と合わせて平均月14万円程度。また国民年金のみの受給者の平均は、月5.6万円程度です。
老人ホームの入居に際し、入居一時金と月額費用を考える必要がありますが、入居一時金はピンキリで、なかにはゼロ円というところも。介護付き有料老人ホームの月額費用の相場もピンキリではありますが、月15万円程度から検討することができます。平均的な年金受給者であれば、月年金受取額+αで、介護サービスをしっかりと受けられ、不安のない生活が手に入る、といえるでしょう。
しかし、老人ホームへの入居が叶ったからといって安心かといえば、そうとは言い切れないという人も。
――あれ、最近、やたらと人が少なくないぞ
老人ホームから人がいなくなる、怪現象。そんな噂を耳にしたことはないでしょうか。
なんとも恐ろしい怪談話……というわけではなく、これは介護従事者の離職によるもの。公益財団法人介護労働安定センター『介護労働実態調査』によると、2022年度、訪問介護員・介護職員の2職種の離職率は14.4%。2007年の21.6%をピークに減少傾向にあります。しかしほかの産業から比べると、依然として離職率の高い業界だといえるでしょう。
さらに介護業界は慢性的な人手不足に悩まされています。ニーズは右肩上がりではありますが、その担い手は圧倒的に少なく、最近ではあえて入居人数を絞る施設も増加傾向にあります。そして、
従業員が辞める → 人材の補充ができない → 入居者を減らして対応 → さらに従業員が辞める → さらに入居者を減らして対応
そんなスパイラルに陥った結果、経営が成り立たず破綻する施設も増えています。政府も業界全体の待遇改善を支援し、なんとか人手不足を解消しようとしていますが、需要増加のスピードは想定以上に早く、問題解決は難しいという専門家も。
高齢化に伴い、さまざまな問題が浮き彫りになる日本。安心できる終の棲家を見つけるのも、なかなかの難問のようです。